昆健一朗先生
『多賀フォー』の前までは、昆健一郎先生が過去に手がけられた仕事を纏める(本にする)ということをやっていました。幾つかありますが『馬丹陽・天星十二穴・歌賦・概要並びに註解』のテキスト入力&校正を最後にしましたなり。
その前は、『傷寒論と針灸』。そのまた前は、『内経並びに難経における五兪穴の運用に関する各種の方法』。これは昭和44年にやられたお仕事です。本屋さんが言うには、こうした仕事が世の中に出回っていれば、日本の中医学や鍼灸の展開も少し違ったものになっていたに違いない、とのこと。こうした仕事が評価されず埋もれていってしまうのが日本の鍼灸界のオブスキュア(暗愚)であるといっております。
昆先生のお仕事の中にはペンネームを《昆豊仲》とされているのもあります。大阪の豊仲にお住まいだったからという単純極まりないネーミングに「なんだかいいなぁ~」と思います。この業界、やたらと画数が多く威厳たっぷりの芸名をよく見かける中において、異色を放っていますです。漢字が読めないんだよぉ・・・。「師匠の一字を貰うのって、好きな人多いよねぇ。師匠(のやっている鍼灸)しか見ていない人なんだろうなぁ」と本屋さんは云っていました。もともと、本屋さんはライターみたいな仕事もやっており、過去に取材活動を結構していた時期もあったそうですが、その頃「なんとか研究所」(「○○医学研究所」「○○療法研究所」とか笑っちゃうのは「UFO研究所」とか)などと名刺に書いてある先生方の「研究所」がたんなるアパートの一室だったりする事を幾度となく経験されているそうです。そして「研究」してる割にはこんだけ? って先生方が案外多かったのでなんだかなあって思ったそうです。 中でも「宇宙大学病院院長」って名刺を渡されたときは、そいつの常識を疑ったって言ってまぴた。ワタシもこのヒト、なんでだか知ってます。何で見たのかは定かでないですが、このあり得ない名称は記憶にあります。世の中いろんな人がいますねえ(笑)
本屋さんが昆先生に御話を伺いにいった所、《アウトロー》、《変わり者》を自認されているとの事でした。この辺り、本屋さんとウマが合うのかも知れません(本屋さんは「自分は至ってまとも」と主張していますが、このあたり、本屋さんや宇宙刑事ジュガイザー先生と相通ずる部分が見て取れます。;笑)。昆先生は、関西鍼灸柔整専門学校で講師をされていても、あまり表に出て行くことをされず、数ある仕事を本にして世に出すことを薦めたお弟子さん達もいたようですが、実現していませんでした。医道の日本から幾つか本やビデオを出している大谷素明先生も昆先生の御弟子さんだそうです。原稿打ちをしていた時に、「大谷素明君が・・・」という一文が書かれており、びっくりしました。と言うのは、ちょうど大谷先生に授業を持っていただいた時で、先生はアメリカ帰りでカイロ・クリニカルマッサージ・オステの先生ってイメージでしたので、こういうコテコテの東洋医学を通って来られたのを知らなかったのです。不勉強で申し訳ありません・・・。
さて。本屋さんが昆先生の所に行った時に、昆先生はちょっと足を悪くされていたようで「あれだけたくさんの人を教えたのに、ボクが具合の悪い時に見てくれる人は一人しかいない(一人はいるんだぁ)」「ボクに治療すると実力を観られちゃうからみんな嫌なんだろう」と昆先生が仰るので、「ちょっとやらせてもらっちゃった」(本屋談)だそうです。「不思議そうな顔をされていたけど、特にコメントがなかったから良かったんだか悪かったんだか分んないけどね」って言ってまぷ。次回に伺う時に、また治療させてもらいましょうか?って聞いてみて「やってくれ」って言われたらまあ合格だし、結構ですって言われたら「バツ×残念!」ってことなんだろうって本屋さんは言ってまぷ。さすが実力主義(笑)。
もともと、本屋さんが10年以上前に努めていた出版社、緑書房の社長と昆先生とは懇意の中で、雑誌『東洋医学』誌上にも昆先生は何度か書いておられます。こうした事から、本屋さんの「いい仕事を残したけどあまり知られていなかった先生リスト」の中に昆先生のお名前があったそうですが、先年の森秀太郎先生のお別れ会で昆先生がご健在であることを掴んだ事が、今回の出版始動へのきっかけだったそうです。
昭和の按摩の知られざる歴史なんかについても、《アウトロー》ぶりが発揮されている文章があります。早くちゃんと読みたいなぁ~。「臭いものには蓋」的な業界の中で、ちゃんと蓋を開けて掃除した方がいいんじゃない?って本屋さんは言い続ける訳ですね。そういえば毒ガス兵器や人体実験で有名な731部隊と鍼灸の教科書に出てくる石川太刀雄(日出鶴丸親子)との関係とか、私も本屋さんから聞く迄知りませんでしたし……。皆さんは知ってましたか? 731部隊(石井部隊)の本を読むと確かに金沢医大の関係者との部分で石川先生の名前は部隊のキーマンとして登場しますよ。この本結構エグイですが・・・。その流れを組むのが今年の金沢で開かれる全日本鍼灸学会の親玉のTる先生だとの事ですが、全日本鍼灸学会の中では731部隊繋がりの御話は例によって(霊によって?)タブーとなってるみたいですねえ………おしまい。
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