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2006年7月 2日 (日)

刺絡学会・実技編

前回に引き続き、刺絡学会のご報告。今度は実技編です。

特に印象に残った実技について書いてみます。本屋さんが座長を務める楠本先生の実技の時間は大注目でしたので六然社は店じまいにして見学に行きました。

今回の学会実行委員長でもあった楠本先生の実技は「できもの・はれものの刺絡鍼法」というタイトルでしたが、前日に頭部を強打された方がおられ、抄録内容とは別になりましたが、実際に臨床をされました。タイムリーな患者出現に「おお!やったぁ」と心がちょっと躍ってしまいました。ごめんなさい。

この男性は、学会前日にドアに左頭部前面を強打され、その部分が直径4~5cm程に腫れ上がっていました。吐き気、頭痛などはなく、左目がぼやけて視界が悪く、瞼が開きづらいとのことでした。先生は問診をしながら、座位にさせた患者の上半身の特徴を列挙され、普段は右背のコリの方が強いのでしょうが、左頭部を打ったために現在は左肩が下がっていると全身の関連を観てゆきます。

脈を診て、刺絡が適用かどうかを判断。いよいよ実技。患部にやるのかと思いきや、患者さんにうつ伏せになってもらい、瘂門の辺りと背中に3ヶ所(左右で6ヶ所)にばね式三稜鍼を使って皮膚刺絡を施し、吸角をかけます。この際の手際のよさ。いつ見ても惚れ惚れします。先生は「緊張している」と連発されていましたが、本屋さん曰く「あの情況であれだけスムーズに出来るのはさすがだ」と賞賛されていました。壇上はスポットライトもきつく暑さと光の加減で手元が随分見えづらいそうです。

次に仰向けになってもらい、「いよいよ腫れている局所に刺絡か!」と思っていたのですが、「局所は傷があるからやりたくない」と敢えて触らず。にゃるほど。代わりに左眉の中を2ヶ所、左側頭部に吸角を行いました。顔面の絞り方は特に注意が必要で、骨に押し付けるようにして絞ります。また、側頭部の吸角は髪の毛に隠れるようにして行うと鬱血班がでにくくて済むとも。以上で治療は終了。患者の感想は「目がはっきりしてきて、頭部強打部から全体が軽くなった」とのことでした。

この後、質疑応答でしたが会場からは質問が出ず。そこで、本屋さんが代わって質問を投げかけました。先ず、せっかく用意された抄録から。記載されていた症例で、猫に咬まれて上腕が腫れたケースについて。「抗生物質と化膿止めを服用したが緩解せず、鍼灸院へ来院」との一文に対して、「刺絡を3回続けて1週間後に緩解、とありますが、薬の服用を続けていたとしたら刺絡の効果とは言えないのでは?」とのイジワルなつっこみを。「おぅ。施術者がうっかり自分の手柄にっしてしまったケース??」と一瞬ワタシなどは頭をよぎってしまいましたが、楠本先生はそんな幼稚なレベルではないわけでございまして、先生との信頼関係が非常に出来ている患者さんですから薬に頼らずに、刺絡での治療を希望されていらしたとのことでした。 また、続く患者さんに関連して、顔面部のヘルペス等の場合、刺絡が難しいのが現実で、なにか工夫されている事はありませんか? との本屋さんの質問に対して、楠本先生は「謎の中国人」に習ったというちょっとした工夫と、臨床の蓄積から出て来た秘訣を披露、こうした事も本屋さんの質問がなければ会場の人達は聞けなかったわけで、なかなか聴衆思いの司会ぶりを発揮。最後に、実際の実技に関しても会場の質問を募っていましたが、何故か質問は出ず、またしても本屋さんが、楠本先生が先ず、背中の太陽膀胱経を使った事に対して、それは「目系繋がりを意図したものですか?」と通好みな質問を投げかけた所、やはり「目系」を意識したもの、との答え、このあたりのマニアックなやりとりも、ワタシはあとから「目系」とかの解説を聞いたので理解出来たんですが、会場の皆さんはきっと分かってたんですね。刺絡学会ってやっぱりレベル高ーい!来年は高知だそうです。南ってお酒もありますし。うふふ。

刺絡は誤解が非常に多い技法です。なんでもかんでも、バシバシ切って血を出すのではないのであります。本屋さんなんて、「血を出さない刺絡が存在するらしいよ」という訳の分からない(ワタシ如きには)ことまでおっしゃいます(数年前、そういう実技があったとか)。実際に本屋さんの臨床では井穴か細絡に限定して使うケースが主です。散鍼で細絡を消すという技も良くやっていますし、実際に細絡を狙う場合も三稜鍼を使わずに5番鍼〜の太めの鍼でやっちゃってることもあるようです。

小児鍼の大家である谷岡先生も刺絡をやられますが、普通三稜鍼の刃を0,5〜1mmとかに設定するのを一切行わず、ストッパーをかけずに全部刃が出てしまう状態にして、手の感覚で切皮を調節されるそうです。こんなにすごいやり方は、谷岡先生ならではだろうと本屋さんは断言しています。小児鍼の鍼頭叩きの延長がこのスゴ技に続くのだそうです。挑戦したいところですが絶対にグッサリ入る気がして、まだまだ怖くて自分にも出来ませんし、誰もやらせてくれないだろうなぁ(笑)。鍼頭叩きは終了したんだけど・・・。

渋谷にある某学校では「お縄になる」と言って、学生には絶対にやらせないそうです。確かに注意が必要な技法ではありますが、それだからこその効果が得られるわけです。ワタシの母校は校長が変わる前までは「刺絡」という科目がありました。ワタシの代ではなくなりましたが、刺絡を中心に治療をされている○部先生に課外授業で教わったりと身近なものでありました。でも渋谷の学生さんの中には、今回の刺絡学会と前日の《認定講習会》の関係法規と衛生学の講義に参加され、意識が変わった人もいたようですよ。

「刺絡」に関係する判例集を纏めた本を買ってみました。そうそう、「しゃけつ」という単語で昨年の事件には判決がでましたが、「刺絡」と「しゃけつ」の違いを各自がしっかり認識できるよう、歴史ある刺絡技法のについて愛着を持って欲しいというようなことを天野先生は仰っていました。でも、それを聞いていた知り合いの参加者は、結局刺絡がどういうものかの定義は各々の鍼灸師が決めてくれ、みたいな事を言われて、学会がそんな事を言っていいのか! ってかなり怒ってました。

「本来ならば全日本鍼灸学会こそが、刺絡問題について先頭を切って取り組まなければならないのにシランプリ」と本屋さんは嘆いています。

http://shirakugakkai.com/ こちらは刺絡学会のホームページですよ。

以下、参加者の感想です。↓

こんにちわ。
昨日の刺絡学会お疲れ様でした。
よい本を手にいれることができて嬉しかったです。
六然社のブース、どこよりも人だかりでしたね。

寄金先生の質問も、よかったです。
目系に風府ですかってやつ。唸らされます。

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