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2006年10月

2006年10月31日 (火)

10・18 『診極図説』感想

この数日のアクセス数はすごいです(笑)。最近全然アップしてこなかったのに、怒涛のようにアップされているのを、追っかけ追っかけ読まれているに違いない。そうでしょ?大体どれも長いから一度に読めない(笑)。よって、数回に分けて見ている傾向があるはずだ。一人の人が何度も見ているってだけであろうと思う。お疲れ様です(笑)。

昆先生の金針梅花詩抄もひと段落したので、社長(本屋さん)より「ブログを書いててもいいよ」と、お許しを頂戴したのをイイコトに1日4個も書いちゃったのである。楽しかったぁ。もっともっと書きたいことは沢山ある。タイトルだけは浮かぶんだけど、それを打つ暇が無いんだも~ん。

10月18日に、シュガイザーこと長野仁先生による『診極図説』の講義&実技公開が行われた。ワタシは学校の授業でも打鍼を2回ほどやる事があって体験済みではあったが、それはあくまでも体験済みという事だけであって、治療に活かす事が出来る段階のものではない。まず、小槌がダメだ(笑)。私も打鍼の気持ちよさに打たれて、思わず某社の小槌を購入したが、シュガイザー先生がお持ちの小槌とは重さ、大きさ、長さが比較にもならないほど使い勝手を全く考慮されていない代物だったというのが分かった。打鍼用の鍼もないので、幾つか持っている鍉鍼を代用していたが、長さが足りないのも分かった。「とりあえず、君の弥曽以知の『珠』を使おうか」と、本屋さんがニヤニヤして言っていたが、会場からの帰り道でシュガイザー先生に、金で出来た『珠』は打鍼に耐えうる材質ではないと教えてもらっていたので、うっかり提供せずに済んだ(ほっ)。

打鍼を臨床で使い続けているシュガイザー先生の小槌は先が欠けている。打ち込んできた年月だと、愛着を持って眺めておられた。道具が無ければ始まらないのが腹部打鍼法である。その事もシュガイザー先生はちゃんとお考え下さっており、近いうちに打鍼セットを和方オリジナルで作ろうと仰っていた。本屋さんはすぐにでもやりたくなってしまったようで、先日ハンズで材料を探していた。結局は角材のようなものから、削り出す方法を取らなきゃいけないそうだが、売り場をウロウロしながら「むむぅ~。これは出来たものを売っていただきたいなぁ」と自分の手を汚すつもりのない、ナマケモノ鍼灸師であるワタシは思っていたのである。打鍼用の鍼だが、先が丸いものと、尖っているものの二種類を使い分ける。その時々に小槌の打ち込み方も変化してくるという使い分けバージョンの説明も有った。

日本オリジナルの鍼法である<打鍼>は、シュガイザー先生曰く「出たとこ勝負!」の治療法だそうだ。腹を診ながら、その情報を得た所で処理していく。腹全体を診終わった時点で、アク抜きというか前処理が終わっているという事だが、実際の治療では別の方法をとって変わりにする簡便措置を教えてくれた。コレだけでも得してしまった!

まず、腹診の歴史というよりは、実践的に腹部の見方の講義からスタートした。腹診で一般的に重要視されている診方ではなく、本当に大事なのはお腹の「この部分」と語調を強めて説明されたのが印象的だ。①~⑧までの順序の中で、肝心脾肺腎の配当別の叩き方の違いを説明に盛り込まれていた。リズムに乗せて打鍼を振り下ろす様は楽しそうである。本屋さんもはまった理由の一つは「コレ、自分が入っちゃうねぇ」という感覚のようだ。反応を追いかけながら叩き続ける動作は精神集中にはもってこいなのかもしれない。打鍼は腹だけを対象にしてるけど全身に効くのはそういうこともあるのかもなぁ~。

鍼を叩きながら、深度も変えて診ている。その都度、狙った腹部のポイントの反応を見ながら叩く場所を変えてたりもしていた。配布資料の『秘鍼要語集』の図を用いながら、「この辺りで咳を止める事ができます」、「ココは臓腑の配当がありますけど、よっぽどの事が無い限りやりません」、「ココはこの方向へ流す。直に打ち下ろし、柔らかい打ち方を」、「ココは斜めに強く振り下ろす」、「ほら、ココで音が変わるでしょ。分かりますか、音の響き方の変化が。こういう変な音がするのは良くない」といった、口伝が実技公開中にはバンバン飛んでいた。腹部打鍼とは関係ないが、足三里の取り方を教えてくれた。「教科書の三里ってどうしてああいう取穴部位になってしまったんだろうね」と、使えないものを教科書に載せている現状についてぽろっと仰っていた。

腹診とは関係無いが、腕の持ち方一つで経絡が出てくるのを見せてくれた。これにはびっくり(笑)。本屋さん的には「ありゃ秘伝だよ、よく言った」という類のコツだったからである。「こういう視点で技を盗むんですよ。見方を教えてあげているのに、殆どの人がもって帰らないからなぁ」と喋りながら、腕の持ち方を小腸経、大腸経とやって見せてくれた。参加者が動く手元ばかりを凝視するのが、不思議そうでならないシュガイザー先生と本屋さんであった。シュガイザー先生の身体の使い方は素晴らしいと、見る人が見ると言う。肩甲骨の柔軟性と下半身の安定があるから、ああいう手技が出来るんだと話していた。やっぱり下半身かぁ。

そういえば、事務所で散鍼をするワタシの後姿を、じぃ~っと見ていた本屋さんの武術系の関係者の視線を、なんだか不気味な気配として感じていたのだが(笑)、その人が言った一言が「背中が繋がっていない」というものだった・・・。最初は意味不明のご指摘であったが、説明を受けるとなんとなく分かった。それにしても、どうして多くの人は初期設定で肩が上がるようになってるんだろう?  人間は楽する方向へ行くものなのに、緊張する方向へ行って凝りを自ら作り出すのはおかしいと思うのだが。重い腕を自由に動かす筋肉が発達しきってないから、脊中に寄せるように使うのかなぁ。本屋さんはよく「この緊張が要らない!」と、身体の大きな筋肉を触りながら、<身体作りの会>の時に口癖のように言って回っている。う~ん、身体作りは本当に奥が深いぞ。

シュガイザー先生は普段、「ブロックが入っている?」と思われる重さの鞄を、片方の肩にかけてスタスタと歩いている。随分前に間違って、「先生、お鞄をお持ちします!!」と、下っ端らしい態度で張り切って臨んだ事もあったが、あまりの重さに「前言を撤回します・・・」と無かった事にしてもらった経緯もある。「腰痛になった事ありませんか?」と伺ってみたら、全然無いらしい。肩こりも無いらしい。頭痛があるのは目を酷使しすぎるのと、寝不足だろう。「小手先鍼灸師を目指せ!」と、冗談に引っ掛けて言っているニコイチであるが、実は相当にハラが出来ているのだ。そこを見誤ってはイケナイ。そういえば本屋さんの鞄も重い。ついでに服も異様に重い(笑)。本屋さんの奥様のお話では、これは本屋さんの父親譲りだそうな。

勉強会も終わり、正木先生の講義にも参加し終わり、シュガイザー先生と事務所に戻った時に打鍼を実際にやってもらえる機会が訪れた!やったぁ~。説明しながらだからというのもあるのか、一人に20分は掛かったので、随分と手の掛かる治療法であるというのが分かったが、ココの反応を足を使って取る、という風にお腹から出て行く治療もご披露頂き、その関係性が非常に面白かった。ワタシの場合は身体の何処と何処が繋がっているのかというのが、自分の中に入っていないので、時間が掛かる治療法ではあっても却って勉強になるなぁと思う。患者が列を成して待っているわけでもないので、じっくり時間をかけて治療しながら勉強させてもらう段階というのも有って良いと思うのだ。が、いつも「まだやってるの?!」と、本屋さんには注意される。長く寝かせられている人の身にもなりなさいよ、と言いたいのであると思われる。「(身体を動かせない状態を強要されるから)置針が嫌いなタイプの人もいるんだからね!」とも。「同じような治療しかしない」と言いつつ、その辺りちゃあんと使い分けているのも最近分かってきた。

シュガイザー先生実技公演中のモデルに対する治療を見ている限り、結構優しく触っていたように見えたのだが、ワタシのお腹が硬かったのか、触診&打たれる鍼もかなり痛い。「うぅ~痛いですぅ」と、トトントントン♪というリズムで打ち込まれる度に、唸っていたが、「治療ですから」と返されてしまう。「優しい打鍼」は幻想であったか・・・と、イメージが崩れていくのを見送りながら身を任せていると、数分後に押圧されても、ちっとも「押された感」がなくなってくるのを発見。こりゃすごい。以前学校で習った打鍼は先生のデモを見ながら学生同士でやっていたので、かなりソフトな<振動>であった。「結局さぁ、この<振動>が腹膜の緊張をほぐすんじゃない?」と分かったような口をきいていたのがお恥ずかしい・・・。シュガイザー先生の打鍼は足や顔や背中や、身体の色んな部分に刺激が走って行った。お腹をいじるだけだが、全身治療になっているのを体感できた事は<お腹>に注目する上でとても良い経験をさせてもらったと思う。先生ありがとう!治療後に椅子に座るともっと実感。くにゃっとお腹が崩れるのだ。「へぇ~いつも緊張してるんだぁ」と、敢えて猫背をしてみては気持ち良いお腹のダレダレ感に酔いしれていた。

講義中はずっと遠くから見ていた本屋さんもこの時は側で見ていて、「手元で見ると、また違うねぇ。いやぁ、何に拘っているのか良く分かるよ。先生にとって重要なのはこっちのこの指でしょ」とズバリ指摘し、先生の顔つきと手が暫く止まってしまった。「だから『秘鍼要語集』で、だからその持ち方にしたのね」とも。

核心を衝かれて手が止まったのか(笑)は定かでないが、あまりにもハイレベルな質問だったのは間違いない。多分これはシュガイザー先生は講義中は言わなかったし、受講生の誰も気がついていないことだったと思う。数瞬躊躇したものの、本屋さんのその問いかけによって、どぉ~っとシュガイザー先生が大切にしている診方、やり方が出てきた。「ね、質問てのはこうやってしなきゃだめなんだよ」「その人が何を大事にしてるのか知ってないと何考えてるかなんか分らんでしょ」と本屋さんは涼しい顔して言っている。

この時点で相当打鍼が気に入った本屋さんであったが、ワタシの次にシュガイザー先生の打鍼を実際に受けてみて治療効果の高さに驚いていた。この後、京大での講義と森ノ宮での講義のために2日間をシュガイザー先生と行動を共にしたらしいが、その間新幹線の中、シュガイザー先生の治療院でと、数時間は打鍼セットを借りてやっていたそうである。「刺せた方がかっこいいから」とか言いつつ、やっている事が相当ストイックである。ワタシも含め、30人以上いた参加者の中でどれだけの人が数時間やっただろうか・・・。

その後、随分日も経った時点で本屋さんから「打鍼の持ち方やってみてちょ」と、またも唐突にテストがあった。張り切ってやったのが全然違っていた事から(涙)、「だからあ、どうして、頭のビデオテープを回さないわけ? あんだけ近くで見てたでしょ。事務所に帰ってだって見てたじゃない」と言われてしまう始末。この間の○っちゃんの治療の時にさんざ言われたのに全然出来てないじゃん!」    ……こういう事を書いていると、自分で自分の首を絞めている気がしてならないが(汗)、実際にこんなやり取りが繰り広げられていたのだ。だから、本屋さんが打鍼の練習をするのにお腹を提供したときも、何故か目隠しをされて、盗み見れない罰の刑に処された。その後も間違えるたびに、「そんなんじゃさあ、教えてくれた人に失礼だよね。長野先生もきっと悲しいと思うなあ……、もう止めちゃうよ、講演会とかさぁ」と脅され続けた(笑)。5回ほどリベンジを挑み、幾つかのヒントを聞き出してようやく正解に辿り着いた。一回正解を叩きだすと、「実はアナタは此処には気がついていたみたいね、あとは、この部分が大事なんだよ」とちゃんと細かく教えてくれる、実は優しい本屋さんであった。とりあえず、クビは繋がった気がする。まだまだ、やりたい勉強会の案は沢山あるのだぁ~!! 内輪のこっそり勉強会も企画してるのだあ~!!

で、次回12月20日は『診極図説』の本をテキストに講義の予定。実際に腹部打鍼をご覧頂いてるので、本の読み方が進むであろう。(でも本屋さんは長野くーんの原稿の進み具合を心配している)「あく抜き」の終わったお腹に残った腹証を、『診極図説』を紐解いて、証として捉え、選穴していくと治療が完成すると予告されていた。楽しみである。

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2006年10月30日 (月)

技の競演

10月の第3日曜日の勉強会が終わった後、六然社ではひっそりと、しかし濃厚な<技の競演>が繰り広げられいたのである(笑)。本屋さんのお相手は、均整治療を操る○っちゃんだ。

本屋さんの元に送り込まれた患者さんの一人に、側弯症の女の子がいる。今時の若者っぽくない、ウブウブとして可愛らしい彼女がココに来てから彼是2ヶ月が経とうとしている。手術を勧められた彼女は、手術をする前にやれることはないか・・・という姿勢でここへ辿り着いた。側弯症の手術内容っていうのはちょっと調べてみた限りでは、側弯によって膨らんだ側の肋骨を切って短くし、つなげるという「そんな安直な・・・」というものだそうだ。脇に大きな傷跡が残るし、なんせ削る肋骨は1本ではない。骨折経験者は季節の変わり目などに嫌ぁな感覚を感じ易いというが、身体への負担も相当なものなんじゃないかと……。まだ20歳前の身体にそこまでする必要があるのだろうかと疑問が浮かぶ。例えば、肋骨が変異している事で内臓を圧迫しているとかで、機能が落ちているのを止めるにはコレしかないのだ、という已むに已まれぬ事情があってこそやるべき手術のような気がすると○っちゃんは言っていた。

今までの治療回数は5回。今回で6回目。本屋さんは巨鍼も使ったけど殆ど手技で対応している。小柄じゃない彼女であるが、本屋さんの治療を受けてからなんと2~3cm身長が伸びたそうである。「えぇ~ワタシも伸びたい!」と、ごり押ししたが「もう年齢的に調整はできても成長はムリ」と断られた(笑)。身長を伸ばす方法もあるそうだ。彼女の場合それが目的ではないが、骨格をいじる事の副産物であろう。

ナンデ、<技の競演>が繰り広げられたかというと。骨格矯正がお得意の○っちゃんに、彼女の側弯症の治療について意見を聞いて、参考にしたかったからだそうである。 お二人の出会いは昨年で、先生と学生という関係であった。が、実は同じ骨格矯正(って言っちゃっていいのかなあ? 筋肉も見てるし本屋さんはよく「筋膜が云々」って言うし、関節の調整もするしなあ…)の大家に習っていた経緯があったそうだ。一緒の時期ではないし、本屋さんの方は例の如くモグリで習っていたらしい。偶然の出会いではあったが、神が用意した必然であった、と陳腐なフレーズを使いたくなる程、お二人は意気投合されている。一月に一回会うたびに、「アレ知ってる?」「コレですか?」「そうそう、ソレ。ふ~んなるほどね」「じつはこうやるともっと使えるでしょ」と、なにやらお二人で確認作業ばかりしている風に見える(笑)。

事前に患者さんには、「京都の大家が参りますので・・・」と了解を取っておき、お越し頂いた。本屋さんが○っちゃんを紹介すると、○っちゃんは治療家モードにスイッチ・オン!まずは立ったまま、触診をし(ココでもう治療スタートなのである)、正面へ回って距離を取って全体像をチェック。<身体フェチ>と自ら名乗るだけあって、どうして側弯になったのかという背景を探っているようだ。身体を様々な角度から観察して得た情報を駆使して、脳みその回転を上げまくってはじき出している、という感じがした。

ベットに寝てもらってからも一様に触診は続く。自分のペースでしっかり身体を観つつ、体勢を変えてもらうたびに、細やかな<お声掛け運動>が行われる。「ごめんね、上になってもらったり下を向いてもらったりして。これで一通り見させてもらったから」と、常に自分が何をしているのかを相手にも明確にお伝えしている。こういうのが、<繁栄の秘訣>なのだと思われる。○っちゃんの治療院は確かに<繁栄>してる。現在、鍼灸学校に通っているために治療時間が削られてしまっている関係上だと言っているが、予約待ち続出中で患者に随分迷惑をかけているそうだ。時間が幾ら有っても、予約待ちは解消できないとワタシは思うのだが。

さて、この時点で治療方針が決まったらしく、本屋さんを見ながら「やっちゃってもいいですか?」と、根っからの治療家魂が顔を出す。○っちゃんの技を見ながら「なるほどね」とか「ああ、やっぱりそういう領域も使うんですか」等と、時折本屋さんが頷く。「○田さん、大胆だなぁ。僕はそこまで出来ないよ」「僕だって初診ならやりませんが、本屋さんがもう随分手を入れて下さっているので、思い切ってやってしまいました」ナドナド、一見して何にも大胆じゃない様にワタシには見える技の議論が始まる。お二人にしか分からない世界である(後で解説を聞いてみると今のワタシには到底出来ない凄い事をやっていた事が分る)。普通、治療家っていうものは自分の技を人前では出さない。療術のデパートと呼ばれる本屋さんは「どうせ見せても持っていけないから、見せちゃうけど(笑)」と拘らないが、さっさと盗める人間がその場にいるのが分かっていたら出さないのが心情だ。しかし、「全部出した・・・」といった爽快感が漂う雰囲気で治療が終わった。「○田さんが出し惜しみせず見せてくれたので、お土産に・・・」と、本屋さんもある技をご披露していた。これには○っちゃんも感激し、「うぉ~」と唸っていた。

治療と共に、彼女には宿題が毎回出されている。例の正坐で出来る、畳一畳運動法を毎日家で取り組むように指示されている。側弯症であっても、彼女の可動域は相当なもので、<身体作りの会>に出席されてい方々と比べ物にならないほど柔軟性&修得率がすこぶる高い。この可動域が高い事が、もしかしたら原因かもしれないとも見れるらしい。「若い身体は機能を失っていないからいいなぁ」と、本屋さんも言っている。「30過ぎると、呼び覚ます所から始めなきゃいけないからねぇ」。そうなのだ、リハビリ(涙)。「患者を鍛える!」と、これ以外にも側弯症の運動法と、某国の特殊部隊が使う身体向上訓練法までもが伝授されていく(笑)。しかし、彼女の偉い所はちゃんと取り組んで来ている点だ。いつも、前回よりも上手くなっている。その証拠に初めて来たのは8月なのに確実にスタイルがよくなっている。「寝る前に一日何回とやってます」と頑張ってくれている。○っちゃんも、「治るにはそれが大事なんだ」と最後に伝えていた。

今回出された宿題は、自分で胸膈を広げる運動だった。一本ずつ肋骨を確認させながらの作業なので、女であるワタシの出番である!  この先生方は絶対に女性の胸部は触らない。そこまで遠慮しなくても・・・と、今思えばある種のセクハラ治療院に通った経験を持つワタシとしては思ってしまうのだが。リスク管理は徹底されている(笑)。というより、身体の反応がよく分かるお二人なので、そういった部分を触ると無意識に出てしまう患者の緊張が気になってしょうがないのだろう。それ自体が治療効果を悪くするのかもしれないし。丁寧に教えながら、「副作用として、バストが大きくなっちゃうかも知れません」と、男二人が真剣に言っている。「えっ。納豆食べる以外に、そんな事できるんですか??」と聞き捨てならない言葉に思わず反応してしまった。「簡単だよ。バストを大きくするのだって、顔を小さくするのだって、ウエストを細くするのだって」と、何を言っているんだという顔が二つこちらを向く。そんなの出来たら、速攻治療院を開いて、世の女性を欺くけどなぁ(笑)。これは立派な<治療院繁栄の秘訣>だもんねぇ。でも、こういったコズルイ<秘訣>で荒稼ぎをする事も無く、自分の技を提供するってスタンスの方がかっこいいなぁと思うのであります。

治療部屋を出られたお二人は、披露された技について検討会(笑)を始められた。驚く事に、示し合わせたわけでもないのに、結局お二人の治療の流れはかなりの部分が一致していた。これにはお互い笑っていたけど、お二方の治療を間近で見られたワタシは不思議な気持ち。部屋に残っていたワタシに、彼女は先生には聞きづらかったらしい質問を投げかけた。「あの・・・。肋骨は全部で6本なんですか?」。悪いと思いつつ、あまりにも上手いオチに爆笑してしまった。こっちが常識だと思っている身体の構造を理解していると思ってしまっていた。高校生だし、そこらへんの知識はまだ残っているだろうと。「ワタシが説明するより、外に出たオジサマ二人のほうが遥かに説明が上手いのでとりあえず着替えて出ようか」と、一足お先に外に出てこの話をすると、お二人とも相当ウケていた。ココには残念ながら模型が無い。○っちゃんの治療院には、ニックネーム付きの脊椎&骨盤模型が常時スタンバっているが。○っちゃんは元々営業畑の人間で、何事についても<説明>がとっても上手だ。模型を駆使して患者を洗脳する術(笑)が、技術と並んで<治療院繁栄の秘訣>の大きな柱だと思われる。実際に頭で理解できている患者の方が治りが早いとも言っていた。で、模型もないし、本は山ほど有るけど、古本ばっかりで詳細な解剖図はない(笑)。「では私の身体を・・・」と、実モデルとして○っちゃんの裸体をお借りして、肋骨が6本ではないという話以外にも、彼女の体がどういう方向を持っているのかというのをよ~く関節が動く標本モデルが実際に提示してくれたので、今回の治療では相当理解が深まったに違いない。

彼女の側弯がどれくらい軌道修正するのかは、まだ未知数だ。本屋さんは半年をメドに治療計画をしているらしい。身体には、その人の意思が現れると最近思う。無意識の事が多いんだろうけど。何故、側弯する身体である必要があるのか、という考えが彼女の中に芽生えた時に治療が別の段階に入る気がする・・・。

さて、この話はココで終わりではない。○っちゃんが新幹線に乗って帰った頃、事務所ではワタシの反省会が繰り広げられていた(笑)。「○田さんがやった事を最初から最後まで言ってみて」という突然のお達しに、覚えている事を喋ってみた「まず患者さんを寝かせて背中を触り……」と始めたワタシの話を暫く聞いていたが・・・。突然遮り、「1時間も経ってないのに、もうこの時点で6割しか残ってないのね。なんで頭の中のビデオテープを回さないの?? いつでも再生可能な映像を自分の頭に残さないでどうすんの。4割以上失ってるでしょ、だから、講演の時に散々撮影不可って言っているんだけど、その意味が分かってないねぇ。そういう能力を鍛えなきゃ、技なんて見てるだけで盗めるわけ無いでしょ」と、ごもっともな胸をえぐるお言葉を頂いた。そして本屋さんは○っちゃんが患者さんと会った時から、どういう挨拶をして何をしたか、まずどうやって立たせて何処を見て何処を触り何を確認し、それから横になってもらって(横になる動作を見ている視点とか)と言った感じで時間軸に沿って再生してみせた。「まあいまなら9割、明日でも多分8割は撮れてるだろうなあ」と事も無げに言う。それを聞いてみると、確かにワタシは「6割以下」でしかないと痛感!  ああ、こういう能力を磨けって言うわけね。「見取るんだ!って言ってるでしょ。ビデオは所詮二次元だからね」……本屋さんが「映像や音声を記録しちゃダメ!、一回で覚える気で見ろ」って言う理由が本気で分かった一瞬でした。 でも、ワタシの場合、頭の中でビデオテープを回すというより、ビデオカメラとデッキを用意する所から始めなきゃならない。闇雲な暗記術では開発できない、脳のリハビリもスタートさせねばならぬのだぁ・・・(笑)。

 あ、シュガイザー先生の実技を本屋さんがたまに撮っているのは、シュガイザー先生の反省材料と本作りの為なので念のため。 そうそう、実はこの事に関連してですが、先日のシュガイザー先生の実技の時に、本屋さんの弟分の方がお忍びでいらしていて、その方は鍼灸は素人なのに、見るべきものをちゃんと見ていて、それについて感想を述べていた。ご本人の承諾が得られたら、それも紹介しようと思っていまぷ。

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2006年10月29日 (日)

10月 身体作り感想

今回の<身体作り>の新しい教えは、<お辞儀>でした。昔、某ジジイに習ったとご本人は言っているのですが、それだけではなく、日本におけるお作法の大家荒しもされていた感じが伺えます(笑)。道場破りは、武術だけじゃないんですね。

ワタシは「君にはお辞儀しか教えられないからね」と、ずっと言われています(笑)。それだけ、<お辞儀>に付随する部分に「物事の秘訣」があるのだと思われます。と、同時に本屋さんレベルの<お辞儀>が出来るようになるには、肉体の鍛錬も必要なのは間違い有りません。気持ちだけではあの所作の美しさは表せませんっ。本屋さんはこの<お辞儀>一つで、色んなものを手に入れてきたそうです(笑)。

本屋さんのお辞儀を一度見た方は納得が行くんじゃないかなぁと思われます。その場を引き込む迫力に圧倒されてしまった事でせう。でもあの場で見せたのはワタシ的には「手抜き!」、某先生宅や事務所の和室で某先生を前にやってみせたものはレベルが違いました。やっぱりダメな例といい例を交互にやるってのは難しいんだと思われます。「心が伝わるというは、ある程度は形で表現が出来る」との事です。「空気を集める」と説明されていました。一応ノウハウはあるんですよ。なかなかそれが出来ないんですけどね。立つ、座るという動作も同時に教わりましたが、相当な筋トレです(笑)。芯がブレずに動くというのは大変。日々リハビリという気がしています。ずっと使用してこなかった、退化してしまった機能を呼び起こす毎日です。「年単位の事だから」と気長に構えてやるように言われていますが、確かに年単位で身体は変わりつつあります。思い起こせば、3年前は鍼灸治療を受けた翌日しか、階段を一段飛ばしで昇る事は出来なかったはずなのです。学友に「今日は調子いいよ。階段を飛ばして来ちゃったもんねぇ」、と自慢しては「むりすんなぁ~」と笑われていた記憶があります。でも、今は毎日どんなに寝不足でも基本的には一段飛ばしが可能です。

まぁ、教えてもらった事を繰り返すうちに、なんとなく見えてくるものも僅かながらにあるんですねぇ。昔の人の足腰が強かったのも頷けました。日常の中でインナーマッスルを鍛えていたんですもん。それも実用面で重要な閉鎖筋群とかね。今みたいに意識する事じゃなく、<商売の対象>になる事じゃなかったんですね。和式トイレにしたって、雑巾掛けにしたって、毎日無料で鍛えていたわけです(笑)。うちの母を見ても、子供の頃の生活スタイルにそういう部分が残っていますから、ヒトという動物として娘よりも遥かに丈夫です(笑)。本屋さんはよく時代時代の背景を話しながら、モノゴトを解説されますが、結局文化論になってくるんだなぁと思います。当時はこういう時代だったから、人々はこう考えた、こういう生活スタイルがあった、というのは<腹の虫>の発想とおんなじかも。

そうそう。女性群に朗報がございますよ。冷え症のワタシですが、この動作をすると足がポカポカになります。冷え症改善歴は彼是6、7年になります。本屋さんに会うまでは、腹巻・レッグウォーマー・ホッカイロ(貼る位置にポイントあり)・室内ダウンブーツ・保温、気泡、振動付き足浴装置といった他力本願グッズで、極める所まで極めた感がありましたが(笑)、今年になって「核心に迫ったな」と到達した気がするのは、やはり身体を動かす以外に道は無いという、<諦めの境地>です。身体を動かすのは面倒ですからねぇ。先ず、避けてきましたけど。これ以外に無いのです。技術を磨くこと、勉強を進める事を他人が代わりにやってくれないように、身体&健康も自分で作る以外にはないのですね・・・。「代わりにオシッコをしてあげられないから」と仰っていた事もありましたが(笑)。どんなに進みが悪くともやって行くしかないのだなぁと、<諦め>がようやく着きました。あはは。

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本屋さんの実技&講演会 in福岡

以前にもお知らせした通り、来年1月、福岡に本屋さんが上陸いたします。今回はこの企画に合わせて六然社より、『鍼灸開業 繁栄の秘訣』を復刻販売致します!  この本はもともと昭和10年代に発行されたものです。「流行れば大名、流行らねば乞食、これが即ち医業に従事するものの生活状態の真相なのである」という出だしで始まるこの本は、戦前に書かれた物ながら現在にも深く通じるものがあるのであります。 例えば、「斯くまでに鍼灸医業の経営が果たして困難のであらうか、・・・(中略)・・・斯業家の開業政策そのものが、医師、歯科医師のそれよりも遥かに遅れていることが判然と認められる。換言すれば鍼灸家は概して開業術にうといのである」という具合に、今と全く変わらないのです(笑)。 「開業資金の点に於いても技術の研究に於いても、全く不用意でありながら、開業さへすれば忽ち流行るものと考へ、一日も早く旗揚げせんものと焦るからなのである」と、<鍼灸開業繁栄の道>をひた走る著者は言い切ります。この本の項目はこんな感じ・・・

①開業の準備 ②開業地の選定 ③宣伝の方法 ④療院の設備 ⑤療院の規定 ⑥患者応接の秘訣 ⑦診察と治療の秘訣 ⑧患者優遇上の注意 ⑨経営上の注意

そして、詳細な内容はこんな感じ・・・

「一人でも多く無料患者を取扱え」、「こんな地形は開業に不利だ」、「他業から鍼灸医になった者はこうして開業せよ」、「住宅地開業の繁栄の秘訣」、「便所は斯くすべし」、「診察時間表の根本問題」、「患者に煽てられるな」、「患者の希望を洞察すべし」、「治療回数券の発行は斯くすべし」、「鍼灸学教授の副業は失敗の因」、「濫りに分院を設置すべからず」、「按摩術兼業の利害」、「妻君の活用は繁栄の基」、「鍼灸医の往診は結局不利益だ」・・・・・等など紹介しきれない内容が盛り沢山!発売日がはっきりしましたら、アップしますのでお楽しみにぃ。和方鍼灸友の会の皆様は1割引です。

本の事はこの位にして、そもそもこの企画はですね、九州にも<六然社&本屋さん>を知らしめたい!!という、熱い思いで駆り立てられたFちゃんが前々から本屋さんに講演依頼をしていた事に端を発しています。九州地区では鍼灸を取り巻く独特の現状があるそうで、是非とも本屋さんの「毒饅頭」的お話を多くの方に聞いてもらいたいと、鍼灸学校を歩いて回ってポスターの掲示を直接交渉されている模様です。

この様に、自主的(笑)に六然社を鍼灸業界に推し進める営業努力をしてくださる方は全国各地にかなりいらっしゃいます。ありがたいことです。この場を借りて社主に代わって(笑)、お礼を申し上げます。営業部長と言われるシュガイザー先生を初め、ゴルゴ36先生もご自身のブログで援護射撃をずっとして下さっていたり、本屋さんの母校の教員D先生も「回し者!」と学生から声が飛ぶのも気にせず(?)、「ニコイチには会っておいた方が良い」と推奨して下さっている。小児鍼で有名なT先生も「この本はエエデスヨ!」と『新日本鍼灸楽会草紙』を某学会出店時に店先で一緒におススメして下さったり、他にも新潟の先生や、京都の先生が特別授業と題して本屋さんを招いている。勉強会のチラシを掲示できない学校では教員自ら授業中に回してくださったりと、影から支えて下さっているのもココには書き切れないが沢山沢山あるのである。因みにワタシは在学中、六然社の本を値引き交渉の末、在校生に100冊近く売ってみた。本屋さんからは「他人のふんどしで相撲を取りやがって」とお褒めの言葉を頂いている(笑)が、多分、ワタシが今日こうしていられるのもあの活躍(笑)があったからだと思ぷ。 そういえば先日も、某地方に新設校を作るに当たって、学校関係者の方が本屋さんの意見を聞きに事務所にいらした。設立をしようとしている人へのアドバイスと言えば、いつもと何にも変わらない鍼灸を取り巻くお寒い事情であったが、「この業界の将来に期待している」「ハラを決めて取り組ませる、職業訓練校を作って欲しい」という真摯なメッセージを最後に伝えていた本屋さんでした。

さて、内容は以下の通りです。お申し込みは直接お願いいたします!スペシャルゲストもいたりしてぇ~。

講演会・実技公開
鍼灸業界の裏のウラを知り尽くした人物がやって来る!!
今日の鍼灸師過剰時代を生き残る為に!?!


テーマ 「鍼灸治療院繁栄の秘訣」 
※ 既に繁栄してる方お断り!
講師 寄金丈嗣 先生

日時 :平成19年1月28日(日)
       10:00~12:00(鍼灸治療院繁栄の秘訣)
       13:00~15:00(散鍼から巨鍼までの実技公開)


場所:福岡市中央区市民センター 視聴覚室
               福岡市中央区赤坂2丁目5番8号
                                 TEL(092)714-5521

受講費:一般¥5,000 学生¥4,000
12月31日までに振り込まれた方は¥500引き
                         一般¥4,500 学生¥3,500

※ 当日、会場内での撮影及び録音は禁止いたしますので御了承下さい。

申し込み方法
往復はがきor Eメール にて下記記載内容を記載のうえお申し込み下さい。
①住所
②氏名
③電話番号
④メールアドレス
⑤一般or学生
を明記の上、下記の申し込み先までお申し込み下さい。
申し込み先、お問い合わせ
〒783-0032 高知県南国市上野田375-1 長春会 事務局 福川裕徳 宛
またはEメール にて
こちら  まで「六然の小窓を見て…」と明記の上、お申し込み下さい。

尚、振込み確認をもって受付完了といたします。会場の座席には限りがありますので、定員オーバーした 場合は、応募先着順とさせて頂きますので御了承下さい。

  応募締め切り1月15日(当日消印有効)

お申し込み後、担当者より受付確認及び受講料振込先を ご返信させて頂きます。

★★★なお、六然社の本は、 こちらの書店ウェブサイトや こちらのウェブサイトから購入出来ます★★★

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治療家の手の作り方

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10.15 経絡経穴感想

現在、神保町は古本祭りの真っ只中である。初日は午前中にもらった治療費を持って、フラフラ~と郵便局の帰りに何件か梯子して来た。靖国通りではテレビ局が撮影をちょうどしているところで、日も暮れて寒くなった時間帯でも、立ち止まって本棚を覗き込む人々で賑わっていた。結局いざわ書林で購入したが、店舗の中でも古本祭りだからと1割引にしてくれた。本屋さんだと顔パスでいつでも割引らしい。週末にお暇な方はいらしてはいかがでしょう。11月1日まで。神保町コネタ情報でした(笑)。

さて、本題の感想文。今回の配布資料:①六然社内の流行曲、バカボンのパパの曲に乗せてお馴染みの「バンバン覚鑁、カクバンバン。天才僧侶だぁ、か~くバンバン♪」の、『興教大師覚鑁研究』(春秋社)収載の北篠賢三先生の論文が配られました。こんな替え歌を作って良いのか? と言うほど、覚鑁の生涯は以前ブログにも書いた様にすさまじい。真言密教教理においても特異的な身体的五蔵観については別の機会にやりましょうと言ってくださっている。いつごろやろうかなぁ~。 ②平凡社『中国の青い鳥』中野美代子著の抜粋。プリントを読む限り、まだまだ馴染みがない単語が沢山出てきて難しい内容なのかと思っていたが、事務所の机に置いてあったこの本をパラパラとお昼のお供に読んでみると、「本草綱目」の辺りなんて随分読みやすくって面白い。こうやって本屋さんの術中に簡単にはまって、本を読んでしまうのだ(笑)。

さてさて。先日、電車で移動中に本屋さんが吐いた非常に印象的だった言葉を皆さんにもご紹介。

「鍼だけ刺してて治るわけないじゃんねぇ~」

公共の場であったが、思わず爆笑してしまった。本屋さんの治療を見ている分、とっても理解できるのである。本屋さんの治療スタイルはこんな感じ。まず望診。玄関から治療部屋までの歩く動作だけで痛み関係の主訴だったら、どこが原因かもう判明している事が多い。続いて問診。主訴を軽く聞いて、現在飲んでいる薬や今までどんな治療を受けていたかを聞き出す。ココに来る方は紹介のみで、かなり症状がひどいケースが多い上、「怪しい治療(笑)をやってみよう」と思うくらいなので、割と漢方薬とか西洋薬も飲んでいる方が多い。だが、患者さんは往々にして自分が飲んでいる薬を知らないこともあるので、「こういう漢字が入ってますか?」「白色のこういうのが入っていますか?」「ツムラの○番ですね」とか「赤いパッケージに入っている○○という薬じゃありませんか?」「青い細長い錠剤ですね」とか、本屋さんから問いかけながらどういう処方をされているのかを見当をつけている(何故か医者が出す錠剤系にも妙に詳しい→ドクターの患者さんも少なくないから?)。その後は、もううつ伏せにして全体を触って、というより修正しながら治療が始まっている。鍼を受けるのが初めての方には先ず殆ど刺さない。やっても数箇所で終わらせる。散鍼はやるけど。とにかく、患者の心の動きを一番に考えているのは、<節穴>と称されて久しいワタシでも分かるのだ。

「鍼だけ刺しても治るわけないじゃん」の裏には多くの言葉が潜んでいる、とワタシは思う。鍼灸治療院で行われるあらゆる要素を含めて言っているのかもしれない。ただ、ワタシ的には「小さい世界観でまとまるな。ダイナミックに身体を見ろ!治療家自身の変なプライド&主義手法にこだわらず、要は治せば良いのだぁ!!」という意味であると受け取っている。こういったある種の真理を突いた言葉を発する時の本屋さんの言い方は、ユーモアに溢れていて面白いが、何故だが傷つく人間もいるようなので、本当はこうやって誰でも読める場に書くべきではない。とは思いつつ、書いているワタシが一番イケナイ。あはは。でも本屋さんはこうも言っていた「本当に純粋な人間は傷つかない、傷つくって言う奴は自我が強いだけだ」って。ああでも、この言葉でもきっと傷つく人がいるんだろうなぁ(笑)。

今回、参加者の前でこのフレーズを「うちの従業員に笑われた」と話されていたが、臨床経験を長く積まれている先生方はお~きく頷いていた。鍼の限界を痛感しているからというよりは、鍼の得意な疾患とそうでないものの区別が付いていらっしゃるのだろう。鍼でも治るんだけど時間と労力が掛かり過ぎるが、手技療法などでは意外とすぐに治るとか、そういう住み分け的な見極めができる先生が頷かれているように思えた。

以前本屋さんに、「なんで鍼灸の免許を取ったんですか? 手技で治しているように見えるので、必要ないように思えるんですけど・・・」と聞いてみた事があった。師答えて曰く、「刺せた方がかっこいいから」という至って男性らしいものであった(笑)。この文面だけで本屋さんを想像される方には誤解を与えるだろうなぁと思うのだが、本屋さんを実際にご存知の方は、この言葉とはウラハラの本屋さんの鍼灸療法に対する一般鍼灸師には真似のできない、すごいコダワリを思い浮かべる事だろう。現に先週の水曜日に実技公開があったシュガイザー先生の腹部打鍼を、木・金とシュガイザー先生と一緒に仕事をしていた大阪出張から帰ってきた時には既に相当マスターしていた。かなり、はまった模様である。気がつけば、打鍼の槌の動きをしている。(「努力が嫌い」って言ってる割には「稽古が足りないからです」って発言もするし。…つまりは「努力してるって思われるのが嫌い」ってこと?)

この経絡経穴講座は現在お寺を会場に開催中で、時折鐘が鳴り響く荘厳なる環境で寺子屋形式で進めている。博識極まりない本屋さんは、「この鐘の意味はご存知ですか?」と禅宗の葬儀の最後のお別れ=「引導」を渡すお話なども教えて下さる。高野山にも関係者がいるという、本屋さんは一体ナニモノなのじゃろう・・・・。

そうそう。経絡経穴らしく、今回は取穴の話もあった(笑)。三里と豊隆と解溪。昔の人の前脛骨筋の膨らみと現代人(特に女性)とでは比較にならない、という事を改めて考えてみる必要があるというお話だった。確かに、本屋さんの治療を受けにたまに来る某有名K-1ファイターの男性の前脛骨筋を思い浮かべると全く別物である。「こういう身体が多分昔の日本人の身体だと思えるから見ておいた方が良いよ」と言っていたが、これぐらい膨隆がはっきりしている豊隆の状態だと、豊隆が豊隆としての穴性を発揮するのかもしれないなぁと思った。また、本屋さんが三里から解谿までのツボを取る際に目安にしている秘訣の話は、簡単な事であったけど初めて聞いたコツ。「今度試してみよう!」と思っている。

また、8冊ぐらいしか手に入らなかった『暦』の本を会場へ持って行った。本屋さんの知り合いの関係で手に入った本である。前回の9月に紹介された『木に学べ』を、このひと月の間に読んだ人が優先的に購入する権利を得る、という特典があった。本を読む人を本屋さんは優遇するのである。なんてったって、本屋だから(笑)。でも、六然社も本屋家業なんだから、仕入価格と販売価格が有って良いはずなのに、仕入価格がそのまま売値というのが従業員としては腑に落ちない(笑)。重い思いをして持って行く意味があるのだろうかと、荷物を運びながらふと考えてしまうのだが、皆さんの購買意欲と手にしての満足感の漂うお顔を拝見すると、「どうでもいいや」と毎回思うのも事実である。きっと、本屋さんもそう思っているのに違いない。それに、「僕を待っているから」という男のロマンを携えて今日も出会い系サイト(古書ネットオークション)をやってらっしゃるに違いないシュガイザー先生の名言「本は重くない」というのもあるしね(笑)。

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古伝大東流闡明

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2006年10月25日 (水)

9.17 経絡経穴感想

先月の感想文を書かずについに今月を迎えてしまった。最近、真面目に仕事をしているからだろう(実はそうでもない:笑)。でも、昆先生の金針梅花詩抄がなかなか終わらないのだぁ・・・。

先月の要点だけは書いておこうっと。本屋さんは最近特に声を大にして言っている事だ。「経絡を見る前に身体を見ろ!」。鍼灸師は「経絡、経絡」と人間の体に線ばっかり引いては<気の流れ>を想像する事に一生懸命になりすぎだそうだ。加えて、ツボの反応にも一生懸命だ。が、裏を返せばその部分、身体においての<点>でしかないツボの部分だけしか見ていない。これは病気しか見ていない、目に入っていない医者と一緒だというのである。「木を見て森を見ず」の言葉を西洋医学に例えて説明する東洋医学従事者はよく居るが、「そういうアナタもそうでしょ」と突っこむのである。

経絡が乗っているのは言うまでもなく身体である。立っているときの姿勢、寝たときの姿勢で分かる情報はすさまじい。体のアンバランスから分かる情報はその方の生活習慣から行動のクセ、精神状況まで殆ど全てを提示しているらしい。だから、脈診舌診に拘らないのだろう。単にアンバランスというと非常に明確なものに聞こえがちだが、これがすごい細か~い世界観なのだ。しかも一筋縄ではいかない、様々な組み合わせがある。その見方を習得できていないワタシからしたら「なんでわかるの??神の声が聞こえちゃうとか?」という神秘の世界と結び付けたくなるのだが、実はちゃんと見方が存在するらしい。本屋さん以外にもそういう見方をする人々を発見したので、これはしっかりとした理論が存在するようだ。この治療技術は鍼灸按摩マッサージの分野ではなく、所謂無免許の世界である<療術>と言われているモノである。ついでだから書いておくが、療術は武術の世界の活法から発展してきた部分が多いそうだ。ワタシはてっきり按摩の方からだと勘違いしていた。

そうそう。治療費についても面白いことも言っていた。「1時間以上やっっちゃったら1000円づつ返したら?」と。慰安も大切だけど、治療じゃなく、ダラダラと時間で稼ぐなというのが真意であろう。1時間かけて改善できない症状は大抵、それ以上かけたって改善しない。2時間もやったら受けているほうもだるくなるし、一杯やってもらったとか、鍼を沢山使ってもらったというのは大阪のオバちゃんの発想だと(笑)。「治療」においてコアになる時間ってそんなにないんじゃ無いかと。「一回の治療でホントに気合いが入ったコアになる部分は3分位だよ」と仰るのである。

「何で鍼灸をやらないの?」とも、本屋さんは「レ◯キ」等に取り組む初学者によく言う。「レイ◯」に走る前に、気がどうのこうの言う前に、気血水とあるんだから、「メニミエール症候群(目に見える)でいいから、目に見える「血」を扱える(=刺絡?)ようになってから、「気」の世界に入ってみたら?」 と毒を吐きながらも(笑)、ごもっともなアドバイスをされていた。

そういえば、藤本和風先生の考案した鍉鍼を見せてくださった。地水火風空の五大に形作られた鍉鍼は一目見ただけで、和風先生の世界観を伺える。でも、ココじゃぁ言えませんが(笑)、五大のうち何かが欠けてデザインされています。本屋さんに言わせるとでもそれは、「欠けている」んじゃなくて、「鍼を持つ者がそれを補う」という意味らしい。いやぁ~、鍼灸って自分なりに世界を深めることが出来るんだなぁ。

大腸経は○の流れと、○の流れの二つがあるのです。さて、な~んだ(笑)? 全10回のうち、折り返し地点のはずが、まだ大腸経・・・・。14経絡全部終わるのか心配になってまいりました(笑)。あ~でも振り返ってみれば、督脈をやる時に膀胱経を、任脈をやる時に、胃経や腎経をやっていたなあ、と考えると案外いらぬ心配なのかも。

おまけ。9月のお勧めの本は、西岡常一著(塩野米松取材構成)『木に学べ』小学館であった。これこそ、本屋さんの身体の見方のベースになっているモノだそうですよ。でも「鍼の事はひとっことも書いてません!」とも言っています。この辺りが本屋さんの面白い所だったりするんでした。

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2006年10月22日 (日)

古本

本屋さんは取次店へ納品に行くと、決まって5冊は本を買って帰ってくる。その度に本が事務所に増えていく。本棚は始めから飽和状態に近かったので、所狭しと床に並べられてゆく本達・・・。何度、けっつまずいた事か分からない。分厚い赤い辞書『中正形音義綜合大字典』(これを手に入れた日は嬉しそうだった!)に三度もつまづいて、その度に手をテーブルの上の文房具に突っ込む羽目になった日には、さすがにムカついたが、本屋さん曰く「日常動作で足を引き上げる動作はなかなか無いでしょ。君のために用意してあげているんだから、頑張って足を上げて通りなさい」と(ヘリクツ)。でもそうなのだ。つまづいているのはワタシだけである。アチコチにぶつけて青あざを作っているのもワタシだけである。肉体が違うからしょうがないのだろうが、本屋さんには障害ではないらしい。因みに、青あざには皮内鍼を貼ると早く治ると教えてもらったので試してみた。確かに鍼の周囲だけは色が抜けたので、これは全体を網羅するように貼るべきだったと思ったのである。

さて、本屋さんが先日古本屋で買って来た本の中に『常用腧穴臨床発揮』中国語版があった。本の背表紙をめくりながら「あぁ~誰かが売っちゃたんだねぇ。日産厚生会玉川病院・東洋医学内科のハンコがあるよ」と、本屋さんが発見した。以前買った本には『中医臨床』とかに名前が出ているような有名な先生の蔵書印があった事があったし、間中善雄先生が丸山昌朗先生に贈呈したサイン(丸山昌朗仁兄恵存 昭和45年七月 愚弟 知愚庵 敬贈 印)のある本も古本屋で見つけてきた。本屋さんは「先生が一生懸命集めた本もこうして売られちゃうんだねえ」「丸山先生の蔵書も散逸かあ、御弟子さん達はなにやってんだろうねえ」と嘆く。この日産厚生会玉川病院については、某雑誌で臨床レポートみたいなものが連載されていたけれども、ハンコが押されている『常用腧穴臨床発揮』が売られちゃうってことは誰かが盗んで売っちゃったって事なのか、それとも病院がこんな本いらないって判断したのかどちらかのわけで。本屋さんに言わせると、鍼灸やっている人である年代の人ならピンと来る◯◯のリハビリテーション病院でも、使い込みとかいろいろあったらしいし、ある程度の機関が蔵書を廃棄する場合は廃棄印を押すのが普通だから、案外誰かが持ち出しちゃったものが巡り巡ってここに来たのかもしれないそうだ。もちろん本屋さんは当然の事ながら『常用腧穴臨床発揮』は2冊も持っていて(そのうちの一冊は某先生の印鑑付)、今回は適正な値段で古本屋に出ていたので買っておいとこうと思ってたら、初版(1985年11月)で日産厚生会玉川病院・東洋医学内科の(昭和61年)ハンコ付き、というものだった……との事です。これも来年の多賀フォーの景品になるか、勉強会に来ている人で希望者の手に渡る運命なのかも。長野書店に日本中の『夜鳴く鳥』が集まる程ではないにしろ、ここにも毛色の違う本が結構うようよしている。特に本屋さんは、所謂鍼灸とは直接関係ない、だけどちょっと角度を変えるととても治療には役立つ分野の本が御得意みたいで、長野書店の品揃えとはまた違った領域にも鼻が利くみたいだ。クンクン。

先日のブログ、「押手が甘い 続編」にも書いたが、来年の勉強会は本屋さんの幅広い知識から周辺知識を学ぶ会をやりたいと思っている。毎月一冊の本と共に、それを読み解く周辺知識の解説をお願いするという具合。例えば『八面体質論』、『五輪九字明秘密釈の研究』などを教材として購入して、その本の解説を本屋さんに聞く。単発形式で興味のあるものに参加できるというスタイルにして・・・。と、ご本人の了解が取れていなくても構想だけは持っている(笑)。万が一のチャンスにすぐに乗るためにはコレが重要だと思っている。うっかり、本屋さんがやる気を見せた瞬間に畳み込むには具体的なプランがないといけない。こうやってプランを書いておけば、参加したい人もソコソコ集まるだろうし、たまにこのブログをチェックしている本屋さんも、こうも頻繁に書かれているのを知ったら、なんとなくまあしょーがないかって「やるつもり」になるかもしれない(笑)。刷り込みの術である。

本屋さんの講座に参加しているある学生が言っていた「どこの勉強会も人が来ることを望んでいるのに、早く参加者がいなくなることを望んでいる所は初めてである意味驚いた」って。結局金儲けようとか思ってないし、勉強は自分でするもんだと思っているので、みんながそうなってくれれば誰も来なくなってそれでいいと思っているらしい。ところがどっこい勉強の仕方が分っていない人もいるし、本屋さんのように「鼻が利く」人ばかりじゃないのが現実だ。そういう人達にとっては、先に走っている人の言葉は結構参考になるのである。殆ど毎日一回は「え、○○ってほんとに知らないの?」って言われているワタシである。この間は「カノウジゴロウ」だった。普通の女の子(笑)はそんなこと知りません! でも「自分をバカ呼ばわりして(知らないで済ますって事でって解釈してまぷ)問題の解決を図るんじゃない!」とも言われているので、日々雑学収集に勤しむ今日この頃です。

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超鍼灸法

東洋虹彩診断 『診断革命』

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大師流小児鍼

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皆伝/入江流鍼術

六然選書① 尾張藩医浅井家伝 金匱口訣

古伝大東流闡明

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2006年10月14日 (土)

今度の診極図説は美味しい!

本屋さんの、無言だけど有無を言わせないプレッシャーが効を奏したのか、10/18、12/20のシュガイザー先生の講座は美味しいですよ、皆さん。なんと腹部打診の実技付き!

そもそも、「なんで『診極図説』が必要なのか?」という事が分からなくちゃイケナイということで、「1回目に実技を見てもらったら理解できるだろうから」と先生からのありがたいご提案で実現したのであります。我々鍼灸師は薬を使うわけではないのであって、この『診極図説』の腹診を鍼灸にどう応用できるのか、といった一つの答えをご覧頂ける会となりそうです!!!  先生によっては、腹診の本を「ああ、あれは薬のものだからねえ」ですましてしまう人もいますが、そういう人種をニコイチは「思考停止」(つまりバカ?!)と笑っています。そこに宝があるのに分からないのは勿体ない「生きてるうちに頭を使わなくっちゃ!」本屋さんの口癖であります。

シュガイザー先生の打鍼はなんと、本屋さんもちゃんとは見たことが無いそう。ワタシももちろんありません。本屋さんに言わせると、シュガイザー先生は、「六王鍼的打鍼」、いわば太極療法的打鍼というものを考えているとの事。そこを原点に、夢分流や、意斎流、そして多賀法印流の打鍼へと展開して行けるような、いわば『意仲玄奥』(日本腹診の源流)を基本に据えた、お腹から見る人体宇宙、そこへ旅立つ宇宙戦艦大和ならぬ、槌と鍼、そして具象から抽象へと変身して行く「虫」、それらを全て見渡す神の視点としての針立て達の想い、そうしたものの流れの中に『診極図説』も『百腹図説』もあるそうです(by本屋さん)。

 最近、ワタシは「長野仁先生の研究のまとめ」と称して、《日本独自の鍼法 腹診が生まれた背景》を自分なりにまとめてみまぴた。って、先生の論文をツギハギしただけだけど。先生には今年に入ってからずっと、毎月のペースで勉強会をやって頂いていますが、それぞれ別のテーマでありながらも底辺に繋がる「何か」を漠然と感じつつも、掴みかねていたものがございました。先生の論文にある、《腹診》に関連したものを拾ってみたら形が見えてきたのですねぇ。ようやく。

以下の項目でまとめてみました。
鍼灸の受容の経緯:約1500年前に日本に入ってきた「中国鍼灸」がどのような遍歴を経て現在に至ったのか。シュガイザー先生の言葉をお借りすれば「歴史的存在でもある伝統医学の文献を紐解く上で注意しなければいけないのは、それらが執筆された状況、つまり時間軸と空間軸をはっきりさせなければならないという点である。時代と風土を考慮しなければ正確につむぐ事はできない。そのためには、医史学的な研究が不可欠となってくる。」ごもっとも。
鍼灸書の閲覧場所:ココに行けば全てが揃っている、という図書館や文庫が無いのが実態だと、確か『日本腹診の源流―意仲玄奥の世界-』か、『皆伝・入江流鍼術』の講義の際に嘆いていらっしゃいましたよねぇ。
藤浪剛一博士  ~杏雨書屋に鍼灸書が集まった経緯~:パクリ元の先生の文章に出てくる小川春興という名前に引っかかったので取り上げてみました。『本朝鍼灸医人伝』『最新日本鍼灸学初歩』を著述されたそうですが、その後自殺されたとか。今気付いてしまったが、ワタシと同じ年齢じゃないかぁ。この年にして、こんな偉大な事ができてしまったのか・・・・。本屋さんお勧めの『帝国鍼灸医報』という雑誌にも、このお名前が出てくる。「関東のあるごくごく一部の歴史にすぎない」と本屋さんが称される『昭和鍼灸の歳月』とは違った昭和鍼灸の歴史には欠かせない人間だと聞いている。余談であるが、せんだって母校のT先生へ『いぶき山艾』という貴重この上ない本のコピーをうちの本屋さんから預かって、贈呈しに行った際に「杏雨書屋にもあるんだそうですが、それよりも綺麗な状態の物を手に入れたので寄付します」と告げると、なんと杏雨書屋をご存知ないようであった。医者の鍼灸は伝統には縁がないのかなぁと思ったが、ワタシの発音が悪かっただけかもしれない(笑)。
仏教医学:これぞ、ずっと不思議に思っていることであった。一年前からシュガイザー先生にくっついて、正木先生の宗教アニメ講座等にも出ているが、「なんで宗教なんだろう」とたまに頭をよぎった。単にシュガイザー先生がアニメ好きなのかな、と深く考えなかったが、ここが非常に重要なキーになる点だと気付いたのは、シュガイザー先生の勉強会でチラホラ見える仏教思想の影からだった。またも、先生の言葉を引用すると「鍼立と呼ばれた室町から江戸初期の鍼灸専門医達は、仏教的な医学思想を中国医学の中へ完全に入れ込んでしまう役割を担ったのではないかと考えられる。なぜならば、当時の医師は概して僧侶であったからである」、これが①にある時間軸=時代である。
本屋さんが勉強会の中で随分と補足解説してくれた【「阿」字・五輪の発生学】。シュガイザー先生には【五蔵・五大の解剖生理学】絵巻物の見方も習いましたねぇ。参加者の多くが「へぇ~」を連発していたのと、実際に五蔵絵巻を見せて貰ったのが思い出されます。この、「五蔵絵巻」も先生の造語なんですよ。ネーミングが的確ですよねぇ。個人的には「モノを完璧にイメージさせる名前を付ける事が仕事の第一歩だ!」とうるさく言っていたじいさんを思い出します。【三尸・諸虫の病因論】は九州博物館の『針聞書』に重なりますね。絵本の発売はもうすぐなのかなぁ。

以上、3つの【 】のトピックをまとめてみたのですが、ようやく入り口が分かったぞ、という程度であってもその後に続く世界観が前よりもはっきりしてきたぞ、って感じです。
「五蔵六府図」の伝来:中国のと日本のってかなり表現が違ってくるんですよねぇ。④の仏教医学が随分と入ってきた世界観がしっかりと出てきているのだそうです。本屋さんは「日本に伝統鍼灸は無い、という認識からスタートするべきで、じゃぁどこから探るかと言えばせめてこの時代だ」と仰っています。
『医家秘方』解剖図構成の詳細:これは多賀フォーで配った資料の解説だす。典型的な資料のようなので、解説を載せてみました。
腹診の萌芽
脈診の再認識も金瘡と五臓論から
最古の腹診文献
静的な内景図から動的な腹位図へ:先生の造語「腹状図」「腹位図」という単語は、なんと上手に、的確に表現されている事でせう、と感激しました。これらのカテゴリー化で見えてくるモノが腹診の鍼灸への応用→打鍼なのでせう。
腹診を先取りしたのは鍼か薬か:締めも先生のお言葉で(笑)。「腹診の歴史を概括すると、本道以外の鍼を含む雑多な領域から発生し、鍼用(腹位図)と薬用(腹状図)が同時に出揃い、薬用はすぐに廃れ、鍼用だけが残って雑多なバリエーションが生じた。のちに鍼用を薬用に改変したものが出現し、しばらく鍼用と改変薬用が併存する。そして、薬用が独創的に再発見され、今度は薬用が全盛となる。この段階になって、仏教医学が完全に中国医学に吸収されたと思われる」とあります。

この腹診から日本独自の鍼法・打鍼が生まれるのですが、その点は講義で解説されると思われます。シュガイザー先生の打鍼の道具はどんなのだろう? 以前に解説されていた募穴の使い方もおしえてくださるのかなぁ? 冷えなければ、ワタシのお腹を提供したいところなんですけど、きっと無理だろうから残念。どなたか立候補してくださいね。

今までの勉強会の総括も実は入っているのが腹診、打鍼に続く『診極図説』なんですね。今回がいよいよ応用編ですからね。臨床にどう活かすかの最大限のヒントを頂けそうです!もうちょぃっと、ちゃんと知りたいと思った学生さんは図書室に行って、鍼灸OSAKAに載っている論文を探して見てから当日に望まれるとイイかもしれませんよ。

さて、こんな機会は又とございません。先生も「二度と打鍼はやりません」と仰っています(笑)。お申し込みの皆さんの誰もが、今日の今日まで知らなかったことであります。ここはみんなで幸運を享受しませう。
ここまで読むと、「私も入れて!」攻撃が絶対に来るかと思われます(笑)。締め切りも過ぎていますが、こうなったら特別に枠を広げちゃいましょう。手配師アンジェラの独断です(っていつもだけど:笑)。事前に「実技公開」としていませんでしたからね。参加希望の方は大至急メールを下さいませ。

   『診極図説』 長野仁先生による 

          

      新刊記念解説講座

今秋、六然社より発行予定の腹診医学書『診極図説』をテキストにした全2回の講座を行います。1回目の10月は『診極図説』が書かれた当時の背景の解説と歴史的意義を解説いただきます。2回目の12月には本をテキストとして配布し、実際に『診極図説』を読んでいきます。

●日時:1回目 平成18年 1018() 16151815 

    2回目       1220() 16151815

●講義内容:『診極図説』

●参加費: 15000円 (和方鍼灸友の会会員 11000円) ※書籍代 5600円を含みます

●定員  : 40名 

●会場  : 代々木近辺  ※詳細はお問い合わせメールにてお送りします。

《お申し込み方法》

こちらまでメールにてお申し込み下さい。予約完了の返信をこちらからさせて頂きます。※FAXでもお受けします。03-6279-5102 六然社 担当山本

予約完了後、下記口座への振込みをお願いします。

 ※お振込み期限10月11日(水)

 

 郵便振替: 口座番号   

0130-5-351212  和方鍼灸友の会

催: 和方鍼灸友の会  

後援: 六然社  

担当: 山本綾乃

● 『診極図説』ってどんな本?? (解説by本屋さん)

『診極図説』の著者瀬丘長圭について、浅田宗伯の『皇国名医伝』には次のように書いてあります。 ……長圭は江戸の人で、吉益東洞に東方の一人と評価された。診断は腹診を専らとし、常に「腹候と外証とは表裏をなすものだが、外証はいろいろあって惑いやすいのに対し、腹候は一つで間違いがない。だから腹診を優先するのだ」といっていた。また「医に方極・証極・診極という三極がある。診極とは腹診のことである」といって『診極図説』という著述をなした。その書には腹診法および治験が詳述されている。その術大いに広まるに至らずして、中年にて没した。」…… また、『日本漢方腹診叢書』(オリエント出版社)中の松本一男先生の解説には、「吉益東洞の弟子、瀬丘長圭は異色の注目すべき腹診法の開拓者であった。彼は『診極図説』二巻を著し、いわば科学的な腹診法の体系化を模索した。たとえば、柴胡桂枝湯ならば、どの様な腹証の場合に用いるべきかというような具体的問題について、多数の患者の臨床例を統計的、帰納的に検討して最良の結論を導き出そうとしたのである。この一例をとりあげてみても、古方派をつらぬく「実事求是」精神を明瞭にうかがうことができる。稲葉文礼の『腹証奇覧』や、その弟子・和久田叔虎の『腹証奇覧翼』などは、この傷寒論系の腹診書の代表作と見なしうる好著であり、いずれも瀬丘長圭の説を継承、発展させたものであった」  とあります。しかし、どうやら、実際に『診極図説』を読み進んでみると、瀬丘長圭の目指したのは、単なる処方の為の一対一対応の腹証探求ではなく、深い人間理解に基づく直感を重視した腹診だったのではないかという見方も出来るそうです。 事実、『診極図説』の発行は、瀬丘長圭の没後なのだそうですが、色々な事を勘案してみると、長圭存命時にすでにこの書はあり、門人達には、門外不出として読まれていたものと想像できるとの事でした。

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2006年10月10日 (火)

千葉市美術館

先日、「浮世絵に見る薬と病い」という催しをやっている千葉市美術館へ行って来た。期間は10月29日(日)までで、なんと200円である。是非、時間を作って足を運んで頂きたい。そんなに大きな催しではないので、1時間も掛からない。病い、治療、懐妊・育児、薬、信仰、社会不安、医学書というカテゴリーに展示されている。本屋さんはチェック済みだったようだが、行って見てびっくりしたのは「医学書」の所に、『蔵志』『解体新書』『解体発蒙』等があった。千葉大学の医学資料も展示されていたのだ。東洋医学に西洋医学の概念が組み込まれた時代に遭遇。そのうちに飲み込まれて、捨てられていった悲運・・・。主役から脇役へ、その後は落ちぶれて滅多に人目につかなくなるのであった。うぅっ。
現在、鍼灸治療を受ける人は全人口の3%。因みにアロマは7%。これは4年前、『○道の日本』がアロマ雑誌に出していたコメントにあった。アロマ市場に多いに期待している、というその主旨であった。鍼灸学校に入って「あの会社は鍼灸関係がメインだったんだぁ」と思ったくらいである(笑)。この会社はなんでも「刺絡」は社是として扱わないそうである。お世話になっている先生が呆れて言っていたが、原稿依頼を受けてせっせと書き上げた中で、「刺絡」に触れていたのを理由に書き直しを命じられたそうである。この姿勢に対しては多くの心ある鍼灸師の先生方は怒っているというより、同様に呆れているという気がする。
 そう言えば、ついこの間の『○道の日本』9月号で「覆面座談会」という企画が巻頭を飾っていた。「おやぁ、このタイトルは……」と、ピンと来た方は『TAO鍼灸療法』の愛読者であろう。一部の熱狂ファンからは、復活を望まれている本屋さんがやっていた雑誌(本人はミニコミ紙という)である(ヤフオクに出品されているのを発見!11日現在あと3日)。読者が1500人集まったら定期出版が出来るそうである(笑)。和方鍼灸友の会の会員が現在約250名、その他合わせてもこの人数までは行かないみたいだ。そもそも、『TAO』の出版中止になった理由は経済的理由というよりは、いかにも本屋さんらしい私利私欲と全く関係のない所での、ある出来事をきっかけにした決断であったそうだ。おっと、話を戻そう。「覆面座談会」というタイトルを見るなり、シュガイザー先生は本屋さんの電話番号を押したようである。ちょうど、多賀フォーからの帰りの高速での事だ。運転中の本屋さんの代わりに、お電話を受けると、相当怒っていらっしゃる。そりゃぁそうだろう。後日、事務所で目を通して見ると、企画自体に何の「おりじなるちぃ」も無い。受け売り、パクリ、そんな言葉が妥当かもしれない。で、座談会をされている学生さん達の言い分は、普通にいつも話されている会話であり、敢えて覆面にして取り上げるものでもなんでもない。「如何に学校がひどいか」を言っているのだが、覆面の割にはパンチが効いていない。ご本家『TAO』の様に覆面にせざるを得ない(笑)、会話の危なさは微塵も無い。鍼灸業界の代表雑誌、マックスがこのレベルならば、ワタシが書いた答辞を、卒業式で読み上げる時こそ覆面ですべきだったかもしれないと反省した(笑)。うっかり、袴姿で着飾って臨んでしまった。
さて、本屋さんにこの企画の感想を聞いてみた。「つまんないねぇ。大体、『TAO』が出てから本の体裁を真似て横書きにしたりとかね。某雑誌も湯液中心だったのに鍼灸関連の記事を増やしたり、色々あんだよ」「ま、あの雑誌もそれなりに役割は果たしたって事かな」と、ちっとも気にしていない。パイオニアとはこうなのだろうか。自分の頭の中から出るモノの方が、世間に存在するモノよりもずっと面白いそうだ。そう思って見回してみると、ゴルゴ三六先生、シュガイザー先生も「おりじなるちぃ」に溢れる行動を結果として残している先駆者である。範囲をもっと広げて本屋さんの人間関係を見てみると、本屋さんが積極的に付き合っているご友人の方々は皆さん、突出した何かを持っている。ほとんどの場合、その分野のマニア的要素がたっぷり含まれており、やはり「おりじなるちぃ」に溢れる個性的な行動を取っている方々である。類は類を呼ぶのである。よって、本屋さんの友人関係は、この日本国においても相当に面白レベルが高いわけだ(笑)。例えば、先日も事務所に某有名(一部で…?笑)鍼灸師が、某有名(一部で…?笑)酒造の蔵元をお御連れになり、蔵元自ら持参して下さった秘蔵古酒&新酒を御馳走になった(そのときワタシは初めて「山廃」という言葉の意味を教えてもらったのだ)。 こんなふうに素敵な人達と付き合う時間を生み出す為に、日々覚醒作用のある物質を大量に摂取して、寝る時間を惜しんで人生を楽しんでいらっしゃるのかもしれない。

 あらあら、今日のタイトルは「千葉美術館」であった。脱線癖は本屋さんゆずり、とご了承頂きたい(笑)。『解体発蒙』の図をよ~く見てみると、動静脈のどちらを指しているのかはちょっと分からなかったが、経脈、絡脈とされていたり、リンパに関するらしき部分を取り出して描かれたものには、上焦・下焦(焦には月偏が付いている)といった単語で説明が加えられていた。当時の医師が持っていた東洋医学の基礎にあった固有名詞を、そのまま当てはめたのだろう。思い起こせば入学早々、経絡経穴の授業を担当されていた先生に「五蔵の名前と、西洋医学でいう所謂臓器の名前が一緒なのは何か関係があるのですか?」と、素人がするかわいらしい素朴な問いを投げかけた。「さぁ~、あるんでしょうねぇ~」と、俗に言う〈聞かないでくれオーラ〉を発散しながらはぐらかされた。じぇんじぇん、腑に落ちなかった。その後しばらくして、時代背景が分かった際に、「こんな簡単な答えか」とようやく合点したのだった。疑問がいつまでも脳ミソに巣食っている、という状況は却って勉強意欲を燃やす原動力になると、将来を見越して下さった先生の温かい親心だったに違いない。あ、あと艾の亀屋さんの浮世絵も展示されていたが、これは歌川広重の方だったので、もう終わっているかもしれない。
 会場の最後の辺りに、石坂宗哲の『栄図・衛図』の巻物が掛かっていた。図に書かれている石坂の「坂」の字が、「阪」になっているのが気になって、先に回り終わっていた本屋さんを呼びに行って聞いてみた。「そういえばさぁ、あれ見た? 家にもあるやつ」との唐突な発言に、一緒に行ったKさんも目が点。「あれ、ってなんですか? 家って、ご自宅ですか??」と矢継ぎ早に投げかけると、「あれ」が展示されている前に案内してくれた。何でも日本に数個しかないようである。他に所蔵しているのは、オランダの某美術館のような機関であり、個人で持っているのはありえないんじゃないでしょうか。なんで普通に持ってるんだろぉ~。

さあ、ご興味が沸いた方。「あれ」は何であるかを実際に見に行って、想像してみて下さいね(笑)。

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2006年10月 5日 (木)

押手が甘い 続編

以前(2006年5月 7日 (日)をみてくださいね)、「押手が甘い」というタイトルで書いたことがある。その後押手に関して新たな発見があったので、そのご報告をしたいと思う。

それは、衝撃的な体験であった。今回もネタソースは例の如く本屋さんである。あまりに衝撃的で笑ってしまった。数回やってもらったが、その度に笑いが込み上げてくる。人は「未知との遭遇」において、笑ってしまうものなのであろうか。な~んて。本屋さんには「あんた、学校で何を習ってきたの?」と聞かれる始末であるが、母校以外の学校でもこんな押手に出会うことはないと思われる。是非、皆さんにもご体験頂きたいと思ってしまう。

その日は本屋さんが珍しく筋肉痛であった。あんなに忙しいのに、毎日武術の稽古は欠かさないようである。「時間の作り方が上手」、「能力が桁外れに違う」と安易に思っていたが、そもそも「根性」が違うのだと気付いた次第である。普通ならやる気にならないもん。「巨鍼の練習を兼ねて足に刺してみてちょうだい」と要請され、下腿にトライしてみた。承山から腓腹筋ヒラメ筋の筋膜を縫って膝関節を越えてへ大腿部へむけて打つと、膝関節痛などにテキメンに効果があるそうである。針先を皮膚に当てて、「えいぃっっ」と気合を込めても空回りして切皮できない。「太い鍼を刺す時こそ、前揉捻をしっかりやった方がいいよ」とアドバイスを頂き、自信を持って「1、2、3・・・」と数を数えながら右にグルグル10回。これが母校の前揉捻テスト方式である。

「ちょっと。そんなに皮膚表面をツルツル回してなんの意味があるわけ?」と、突如後ろを振り返る本屋さん。そうか、そうか。皮膚表面ではなくもうチョイ重めに筋肉までね、と再度挑戦。「1、2、3・・・」と数を数えながら右にグルグル10回。「本気でやってるの?」ともう起き上がっている本屋さんは、ワタシの三里付近にやってみせてくれた。

そのやり方は、ココに鍼をするというスジや硬結だけを捉えた前揉捻。周囲に1mmもブレることなく、確実にそこだけをきっちり押さえ、深部に加重が加わる。これだけで気持ちよい。強圧が嫌いなワタシであるが、所謂強圧とも違ったこの重厚な前揉捻は、昭和の鍼灸を感じさせるものである(なんだそりゃ、と思われる方もいらっしゃるだろうが、ワタシの個人的な感じ方と表現であるので気にしないで頂きたい:笑)。グルグルと深部へ進んだ力が次の瞬間、スジ&硬結を砕くかのようにゅぅっと一点に集中して押し込まれる。ここで笑いが出てしまうのだ。しかも、発汗作用もプラスされ三焦が動くぅ~のである。強烈過ぎるこの刺激に「こんなに強くやったら鍼しないでいいじゃないですか!!」と思わず声に出してしまった。「そうだよ。指鍼(ゆびばり)。刺さずに済むならそれでいいじゃん」との真っ当なお答え。そうかぁ。指鍼ってこういうのかぁと、今まで按摩の授業等で「ゆびばり、ゆびばり」ときゃっきゃ言ってグイグイ押していたのが青っちょろく思えた。

本屋さん曰く、この押手は滅多にやらないそうである。配穴を限定し、本当に少ないツボしか使えないような難病の人や、急性症状の時だけのお出ましだそうだ(陽経の経穴が主らしい…血海も取られたけど…)。だから今までお目にかかる機会がなかったのだ。それから、この押手は人差し指と親指で出来る満月がぴたっと皮膚に寄り添って隙間が全くないシュガイザー先生のマジックハンドだからこそ出来る例のスペシャル押手が捉えている世界観が自分には体現できないから、取りあえずこっち側でやってみてる、みたいなことも言っていた。それにしても、次から次に出てくる知識と技術の引き出しの多いこと、多いこと。しかも、鍼灸の分野に限らず殆どの領域を網羅されている。来年は本屋さんに「本屋に学ぶ本読み講座!(仮)」というタイトルで毎月テーマを決めずに鍼灸関係周辺領域のお話をしてもらうのもいいなぁと思っていたりするのである。経絡経穴の講義中でも脱線して面白い話に進んでいて、無理矢理経絡経穴の話に戻していたりするのだが、そのまま脱線して走ってくれることを望んでいる参加者も結構いて(アンケートを取ったのだ)、結局本屋さんは大まかなテーマを決めておくだけで、あまり限定しないで話してもらった方がいろいろ出てくるような気がするのである。その中には覗き込むのもちょっと憚られるような闇もあるけれど、ものすごく澄み渡った空もあったりして、人生経験の少ないワタシとしては、なかなか得をした気分なのである。それぞれの道のプロのお知り合いも沢山おられるし、特別ゲスト登場~みたいなのも是非やってほしいことの一つである。が、予告通りの「来年はやりません」を覆せない気もする(笑)。とにかく、第3日曜日の本屋さんの勉強会へ出席されている方の意欲と、講義の内容を自分なりに消化して取り組んだ行動次第で、本屋さんのお気持ちも動かせるのではないかと思われまする。本屋さんの講義内容はプロ受けと言うかマニア受けと言うか、すでに自分で開業していたり、肉体訓練をやられている方達から「え、始めからここから教えちゃうの? 勿体なくない?」とか「数年分得した」とか、「あんなこと教えちゃうのあり得ない!」とか「ずっと悩んでいた部分が解決した」とかの興奮しながら伝えにきてくれた反応を聞いている。正直言ってワタシのレベルではなにやら凄そうということは分かっても、具体的に何がどうだったのかは把握できないレベルで、一部の参加者には感動を与えているようです(でも本人は飽きてきてる?)。お金で動かない人を動かすのは難しいようであるが、今まで見ている限り、案外突破口もちゃんとあったりするのである。いつも言っておられるように、「自分の足で立て!」を実践している人間には結構優しい本屋さんなのであった。それを知っている人は少ないけど着実に増えていると思える今日この頃である。

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