戦国時代のハラノムシ
「ここのところ、ブログを書いていないじゃないか。多忙な時間を割いてチェックしてやっているのに」と本屋さん経由でお叱りの声がシュガイザー先生改め鴻仁先生から届きました(笑)。下書きは沢山あるのですが、なかなか仕上げに至らなかった・・・という情況でして、とブログ上で言い訳してみたりして。
そんな所に、タイムリーな話題が。5月27日(日)付けの、読売新聞の文化面、《本よみうり堂》のページに鴻仁先生の新著が取り上げられておりました。その日の本屋さんの勉強会にいらしていた、鴻仁先生の治療院でお手伝いをされている学生さんが持ってきてくれていたので、早速講義のサワリに紹介してくださいました。ワタシの家も読売新聞ですので帰ってから見てみると、載ってる載ってる(当たり前か)。
見覚えのある赤い表紙がキレイに映っておりまして、母に「この本はいつもお世話になっている神戸の先生が出した本なんだぁ。稼いだお金を全部本につぎ込んじゃうくらい本ばかり買っている先生でね、神保町に来たときには『またやってしまった・・・』と言いながら、両手にたっぷり本を買って帰ってくるんだよ。大体一度に段ボール1杯分、いつもそれを事務所から送ってるんだ」と自慢気に紹介してみました。凡人の母は「そんなに買い続けてどこに本を置いておくの?」と心配そうに聞いていました(笑)。
http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20070528bk0b.htmこちらのHPで紹介されています。飛ぶのが面倒な方に下記に添付しておきますね。
『戦国時代のハラノムシ』
長野仁 東昇
出版社:国書刊行会
発行:2007年4月
ISBN:9784336048462
価格:¥1050 (本体¥1000+税)
可愛くて笑える病魔
副題は「『針聞書(はりききがき)』のゆかいな病魔たち」。「ゆかい」な「病魔」ってどうよ? と思いつつ手に取ったのだが、たくさんの変な生き物が踊っているように見える表紙からして、たしかに愉快至極ではある。ページを繰ると、もっと楽しい。人体に巣くう(と考えられていた)「虫」がカラーで描かれているのだが、その「虫」の容貌(ようぼう)といい生態といい、「うふっ」と笑いたくなってしまうものばかり。もっとも、原書は現在の大阪府茨木市あたりで活躍していた鍼(はり)の先生が一五六八年にまとめた病気の解説書だというから、れっきとした医学書なのであった。
当時の人々の病気のイメージがよく伝わってくる。彼らにとっては、病気は「虫」の形をしていて、どこからともなく飛来し体に取りつくもの、あくまでも外から来るものだったのだ。
本書に描かれた六十三種の「虫」はどれもユーモラスで憎めない。「小姓」という「虫」などは、「子供のような肌色の顔に、白くて長いヒゲをはやし」「ペチャクチャしゃべり、甘酒が大好物」。可愛(かわい)いなーと思いきや、病状の説明には「この虫にとりつかれた人は、不治の病におかされ」「いかなる名医でも治せない」とあり、外見に似合わぬ凶悪さである。ほかにもギックリ腰を引き起こす「腰抜の虫」や鬱(うつ)状態を招く「陰気」、昼寝ばかりさせる「昼寝の虫」、宿主を酒飲みにさせる「大酒の虫」など、想像力の豊かさを感じさせる「虫」が登場する。(「本の虫」がいないのはちょっと残念。)
中国の医学古典では腹部にできる病的な結塊に過ぎない「積聚(しゃくじゅ)」(=五臓六腑(ぷ)に生じた異変)が、日本では「感情を持って動き回る自立した生命体と捉(とら)え」られた、という解説者の指摘が印象に残った。虫の音を愛(め)づる日本人ならではの身体観、なのかもしれない。薄いけれどムシできない、興味深い一冊である。
◇ながの・ひとし=鍼灸師(しんきゅうし)◇ひがし・のぼる=九州国立博物館研究員。
(2007年5月28日 読売新聞)
ワタシの記憶が確かならば、鍼灸師の書いた本が読売新聞の書評に紹介されたのって初めてじゃないかしら? 鴻仁先生スゴ〜い!(笑)
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