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2007年6月 2日 (土)

井穴刺絡講座

 4月、5月と井穴刺絡マスターをテーマに講座を本屋さんにをやって頂きました。本屋さんは刺絡学会で認定をする側のお立場でもあられるのですが、その実力を最大限に生かして頂いた内容となり、2回目で皆さんとても上手になられていました。皆さんも相当に努力されたのでしょうが、教える人次第で決まるモンなんだろうなぁ~と一緒に参加させてもらいながら思っておりました。

 と言いますのも、最近、某お寺で檀家さんを集めての治療会をしています。もともと本屋さんが以前、一年くらい(別なお寺ですけど)毎週午前中にボランティア治療をやっていたんだそうです(散鍼もその時練習して使えるレベルにあげたそうな。千人までは数えたとか……)。それを(本屋さん曰く「アナタを鍛えるため」)復活、某お寺さんに打診した所二つ返事で開催が決定しました。もともと「手伝わせてもらう」感覚だったワタシですが甘かった、なんと本屋さんが来てくれるのは月に一回、その他の週はワタシ一人でやってまぷ。午前中だけで12〜18人、「そういう環境の中で見えてくるものがある」と本屋さんはいいますが、その意味がなんとなく分かりつつあります。正直結構大変ですけどね。

 さて、そのお寺の住職の奥様が言うには「どの分野でもそうだけど、どの先生に習うかで決まってしまうから、本当に先生選びは重要」と仰っていたことを思い出しました。「学ぶ」というのは、「真似する」という語源から出てきた言葉だそうで、なるほどぉと思います。大人になってから3年間鍼灸学校へ行って分かったことは、先生のレベルも色々なんだ、こちらで取捨選択していかないとダメなのか、という事でした。特に鍼灸業界のように、先生になるのに実技も学術も認定試験みたいなものも無く、一定のレベルの設定すらできない現状ではこちらが頭を使うしかないのですね。だから、黙ったままじゃダメだし、行動しないといけないのでありましょう。

 さてさて、2回に分けたのには理由がありました。1回目で型を覚えてもらうという本屋さんの作戦です。これは唯掌論をベースにしています。「本当に良く考えられている。この応用の広さといったら」と、本屋さんは絶賛です。ですから、初回は刺絡なのに一滴も血を見ませんでした(笑)。「上手くなる為には、血を絞る前にやるべき事も出来る事も沢山ある」というのが本屋さんのお考えです。工藤流の刺絡がうまい先生方のやり方をつぶさに観察した結果、うまい先生方のやり方には共通点があり、それがこの部分や、こういう指の使い方、などと観察分析の結果を、初心者に分かりやすく身に付くように説明してくれますが、これって結構稀な事です。大抵の勉強会って、先生がやって見せて、じゃあ皆さんでやってみましょうー、そして(刺絡なんて何度も出来ないし…)お互いにやり合って満足して終わり……ていうパターンが多いんじゃないでしょうか?  実際に刺絡学会の初心者講習会でもそうみたいだし。本屋さんのやり方は、「身に付く」と言う意味でははるかに優れていると思うのはワタシだけ???。でも本屋さんはいってまぴた「僕が教えるのは井穴刺絡だけ、その他は是非、刺絡学会の講習会に出て下さい」ですって。そういえば6月の刺絡学会学術大会(高知)ももうじきですね。

 で、血を絞る前にやること=型作りから一ヶ月。2回目はペアを組みながら、三稜鍼を使うも、刃を出さずに練習を始めました。うっかり切れてしまったペアも中にはいらして、「まだ切っちゃダメって言ったでしょ。まだなのっ」と、本屋さんとしては珍しく叱っていました(笑)。この時に様々な注意が出されます。

①早さ。「このペースで切って行って」「今の倍ちかく早く出来るはずです!」と遅い我々にリズムをつけて回ります。とにかく井穴刺絡は早さが大事だと言います。

②しっかり把持固定する圧の確認。「井穴にちゃんと輪の後がムラ無く付いているか確認。刃を出し過ぎないためにも、この圧でしっかり肉が盛り上がるようにしてね」といったアドバイス。(一部のアドバンスな人には井穴の取穴の仕方も細かいアドバイスをされたのを横目で確認、今度こっそり聞いておこうっと)

③次の指を取る際の動きの注文。「いちいち反対の手で持ち替えない。流れが大事。そのために唯掌論のこの動きが生かしてこういうふうに使って!」等々

④「お互い鍼灸師だからやられる方も協力しちゃってるけど、初めて受ける患者さんは次ぎの指を差し出すようなことは普通してくれません。その手をどうやって支えるのかも視野に入れてね。」

⑤「やる指先ばかり見ない!。自分のやりたいことだけに専念しちゃダメ。患者さんがどこを見ているか、不安に思っていないか、そういうことにも気を配って。」

⑥「前回教えた絞り方ね、押し出すんじゃなくて大事なのはグローミューの血流を改善する事、だから絞りはこの感じ、ほらほら、そういう絞り方すると患者さんの指が痛いでしょう……」 ・・・事細かに指示が飛びます。 

 ワタシの場合は、塩野の三稜鍼が自分の手指からすると重くて大きくて、把持と土台作りが上手くいかないとボヤいておりましたが、本屋さんに相談すると「それは指の力の問題ではなく、手首のから肘の位置関係の意識が無いからです。ここをこう意識して使う事で、解消できます。唯掌論を思い出して。このエクササイズね、手のひらは最後にどっちに向いてるの?? そうそう、その時の肘の位置は???」とのご意見。「そうかぁ、本当だ。すごいなぁ唯掌論」とペアの方と興奮してしまいました。全ての参加者を見て回って下さった時間で、皆さんコツを掴んで、結構なレベルアップ。

 これからいよいよ本番です。手袋をはめ、消毒をして臨みます。アチコチから「イテッ」という声が漏れたりもしていましたが、シャドー刺絡のお陰である程度はスムーズに運びました。ただし、5本一気に切ってしまうと、もう血が固まってしまって出てこない現象が残り3本ぐらいから始まったりもします(笑)。絞り方は実際に切ってやってみれば一目瞭然。「指を切っちゃった時って押し上げるようにするでしょ、そのつもりでついつい押し上げちゃいます」と言っていたTさんも、いざ引いてみると「ちゃんと出ますね」と納得されていました。この時点で誰からもガーゼのふき取り方についての質問が挙がらなかったのに業を煮やした本屋さん、「この指に挟んで、こうやってふき取りながらガーゼ面をずらしていきます」と解説が入りました。

 本屋さんの言うように「血を出す前にやることあるでしょ」というのがよく分かりました。絞り方、ふき取り方は血を出してからの問題でしょうが、型を覚えていればスムーズに移行できます。「後は人数をこなしていけばいいんだな」という風に思えるぐらい、疑問の余地はありまへん(笑)。一通りの説明をもうしていただいてますからね。やっていくうちに切皮の仕方の力加減は調整されるはずです。だって、「患者さんの顔を見て」というのを気にしていれば自然に体得できることになるんでしょうしね。

 う~ん、やってもらう前から想像してはいたものの、このシステムはほんとうに素晴らしかった。結局本屋さんは、例えて言えば魚の取り方を教えようというスタンスなんですね。釣竿が無ければ、そこに落ちている釘やヘアピンを使ったり、とにかくなんとかして魚を捕るにはどうするか、それを自分の頭で考えましょう、という……。道具・手段に拘らず、目的=魚を取ることをどうやって達成するかのみを考えるという思考回路ですね。ご本人曰く、「どうやって生き抜くかの理論」だそうで、「多くの学会や研究会は釣った魚を食べさせる事や釣り竿の御丁寧な説明はするけど魚の取り方は教えないし、釣り竿無かったらどうするかは教えない、てゆうかそういう頭がない。それで満足しちゃってるなんて、みんな甘っちょろいんだねぇ」とのことでした。でも、まあ紛争地域に行ってた事のある人にそういう事言われてもねえ……(笑)。

 参加者の皆さんを見回すと、この2回で臨床家の先生方は相当美しい所作を体得されていました。「学生さんとの違いはやっぱりあるんだなぁ~」と、経験の技量を感じたわけでございます。「お、慣れてるなこの先生」といった感じですね。患者さんも安心されることでしょう。

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