昭和鍼灸史
先日お知らせしました、六然社直伝講習会第五弾にまつわるお話です。サブタイトルを
「貴方は杉山流と杉山真伝流の違いを知っているか」
と、したのにはワケがございます。「杉山流」と「杉山真伝流」を同一と混同している初歩的ミスが当たり前にように横行する鍼灸教育現場。この講座を聞けば、違いはもちろん、「杉山真伝流」の有用性を実感できること間違いありません。ワタシがこれらの違いに気付いたのは自分からではなく、本屋さんに問われて気付いたのでありました。「え、同じじゃないの?」、「じゃ、杉山流が王道でしょ」(爆!)。この落とし穴にはまっている同類は多いに違いない(笑)。
あれは鍼灸学校3年生の頃だった(遠い目・・・)。本屋さんに『昭和鍼灸の歳月』のちょっと前の時代について、母校の学生相手にお話していただく機会を作りましたですよ。これはワタシが企画した第二弾講習会でしたっけね。第一弾は鴻仁先生の散鍼&長鍼&唯掌論でした。今となっては貴重なお題目。宗家なのに滅多に唯掌論をお披露目して下さらないですもんねぇ~。裏宗家の本屋さんが「どうして教えてあげないの?」って聞いたら、鴻仁先生曰く「だって聞きに来ないんだもん」ですって(笑)。
さて、ワタシの母校は柳谷素霊先生にまつわるエピソードには事欠かない環境でして、もちろん『昭和鍼灸の歳月』は読んでいましたし、その亡き著者を師と仰ぐ勉強会にも出席させてもらっていたので妙に身近に感じ(例の八木下翁の『鍼灸重宝記』実物も拝見しました)、昭和の武勇伝的鍼灸師話は知っているつもりだったんです。ですが、井の中の蛙ですよ。これまた。当時、実を言えば、東京は鍼灸盛んじゃなかったんですね。関西にくらべて。鴻仁先生の『針聞書』の研究でも、日本鍼灸のルーツは関西(茨木?)ってことが証明されてしまいましたし……。しぇ~。知ってるつもりの話は「あまりにも神格化された素霊先生にまつわる思い出話エピソード」だけだったと気づかされたのは本屋さんとの出会いからでございました。
でもね、素霊先生の奥様が亡くなる前にやった最後の講義を受けたうちの一人でもあるんです、ワタシ。テーマは乳房マッサージでしたが、昔話も沢山してくださいました。素霊先生の裏話を奥様ご本人から聞けたのは歴史的価値がありましたよ。奥様と素霊先生は年齢差がかなりあったそうですから、「一人前の社会人に育ててもらった」というような言い方をされていました。国会図書館へ通っては写していた奥様の若かりし頃のお話から、素霊先生が亡くなった後、それを引き継ぎ学校を経営してきた手腕。“おしん”じゃないですが、NHK朝の連続小説、女性一代記みたいで面白かった。行政のお偉いさん方を相手にちゃんと意見が言える女にしてもらったとおっしゃっていました。とにかくパワフルで肝っ玉の据わった女性だなぁという印象でした。必死に現実に向き合って生きてこられたんだろうなぁという基礎の強さがにじみ出ている方でした。講演後、半年ぐらいでお亡くなりになりましたが、広い畳部屋に響き渡る声量、杖で支えながらもかなりの時間を立ったまま講演されていた記憶があります。
そうそう。戦前の雑誌についても、母校の図書館にある程度まとまって所蔵されていましたですよ。「こんなのありましたぜっ、旦那」と本屋さんに告げると、「それはすごいぞ!!」と価値を教えてくれました。へぇ~、すごいのか。と、それを聞いてとりあえず借りて読んでみたわけです。読み進めるうちに、当時の緊迫した臨場感なども伝わってくる。それから、熱いっ。熱意がものすごい。戦前の人は気概がありますからね。いつも戦っている風なんです。文章が断定的で、読んでいるこっちも意気が上がっちゃったりするんですよね(良いのか悪いのか)、「○○しても、差し支えないっ!!」とか言い切ってみたくなる(笑)。この雑誌を読んでいくと、本当に全国で色んな名人がいらしたんだなぁ~というのがよく分かります。それまでワタシが見ていた鍼灸界の歴史って、「柳谷素霊先生からスタートしたすごい狭い円錐型だったのかぁ」と見えてきました。この辺りから、鴻仁先生の江戸期の研究の意義が見えるようになったのかもしれません。母校の先生方の仰る“古典”は、素霊先生の前は一気に『黄帝内経』へ先祖がえりみたいな感じでしたから。間がすっぽ抜けているんです。それにはまぁ理由がないこともないですよ。素霊先生達の時代は、ちょうど江戸期の文献がまだ表に出てこれなかった時代だったという背景も差し引いて考えないといけないんですが、じゃ、素霊先生が「古典に還れ」と掲げられた時に想像していた「古典」て、具体的にどんな鍼灸だったんだろう?と、ふと思ったのです。
「素霊先生が影響を受けた先生方って誰なんだろう?」、「古典、って言い始めたヒントってどこからだったんだろう?」、そんなことが頭によぎり始めました。素霊先生に繋がる逆の円錐型、その底辺こそが先生が見ていた「古典鍼灸」なんでしょうが、そんな視線で見ていくと、素霊先生が作った教科書に頻繁に出てくるのが「杉山真伝流」の影なんですよ。チラホラというより、大胆に引用。コピペの世界。素霊先生以前の書籍を文字通り私財を投じて集め、ブツ切れの伝統の糸をなんとか紡ごうとしているニコイチの仕事、ここに注目せずに伝統鍼灸について語れるのでしょうか? そういえば、大浦先生の杉山真伝流もその研究発表の皮切りは当時本屋さんがやっていた経絡治療学会の機関誌『経絡治療』155号掲載でしたね。(学会内からはなんの反響もなかったそうですが、「事の重大さに気がついているのかなあ?」と当時本屋さんは言ってまぴた)
この辺りの説明は、実は12月9日に本屋さんがしてくれることになりました。あ~、前置きが長かったですね。久しぶりに書き込みましたよ(笑)。ということで、大浦慈観先生による杉山真伝流の実技以外にも今回の直伝講習会第五弾の価値は大きいのでした。これは聞かないと損しますよぉ~。
六然直伝講習会 第五弾
「貴方は杉山流と杉山真伝流の違いを知っているか」
《講義》
●日程: 平成19年12月9日(日)
①午前 10:00~12:00 ばーば佐智子先生
「今年も有難うございました・感謝際in東京 ~僭越ながら多賀フォー前座漫談を再演~ 《絵で見る病気治し入門》、《虹彩と歯形の共通点》」
②午後 13:30~16:00
13:30~14:15 寄金丈嗣氏 『昭和鍼灸周辺事情』
14:30~16:30 大浦慈観先生 『杉山真伝流臨床指南』
●場所: フォーラムミカサ 8階
〒101-0053 東京都千代田区神田美土代町3-1三笠ビル 03-3291-1395
http://www.fm-tohnet.com/map.html
●定員: 80名
●参加費: ①無料 、 ② 6000円 (和方鍼灸友の会会員でない方は7000円)
《お申し込み方法》
① こちら までメールにてお申し込み下さい。予約完了の返信をこちらからさせて頂きます。
② ※FAXでもお受けしております。返信先の電話番号を明記願います。03-6279-5102 六然社・担当山本
③ お申し込み完了後、入金締め切り期限:12 月4日(火)までに下記の口座へお振込み願います。
郵便振替 :口座番号
有限会社 六然社 00150-4-44092
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