今回ご紹介する本は、ワタシの人生を根底から支えてくれそうな内容です。【食用油】の知識が欲しかったので、患者さんにも紹介しやすい、お話しやすい、身近な文章でかかれた本を注文してもらいまぴた。
中央アート出版社の『食用油には危険がいっぱい!』氏家京子著(1500円)。
ワタシは外食もかなり多いのですが、自炊をしていれば、油を一切使わない調理法の方が好みなので、気付くと数ヶ月も油を使っていなかった・・・ということになります。ワタシの場合は自分で作る以外の場所からしか油を摂取しないのですから、とても受動的です。「大体、外食産業のずっと加熱されっぱなしの油が良い状態なワケがない」とは思っていたものの、もっとやばかった。一般家庭に普通にある食用油こそ見落としてはいけないものだと言うのです。
余談ですが、アロマで使う植物油は基本的には遮光瓶です。「自然なものなのでぇ、酸化が早いですからぁ、100%ピュアなアロマ商材はガラスでしかも遮光瓶に入っているものなのですぅ」とお客様によく説明していましたが、ふと考えてみるとスーパーで売っている食用油はプラスチックのボトルでしかもあんなに大量に入っている・・・。おかしい・・・。そうそう。アロマ商材を置く棚に照明があったりすると大変でした。デパートなどの商品陳列の棚には照明が付いているタイプがあります。商品をより素敵に見せるためなのですが、この熱がキャリアオイルと呼ばれる植物油の酸化をすご~く早めます。テスターで開封後の瓶を陳列しておくとあっという間にに酸化(もちろん蓋はしまっています)。特にグレープシードが早かったなぁ。なので、ワタシは勝手に照明を切っていました。これで随分長持ちしました。そして、家での保管も冷暗所です。足の速いのは冷蔵庫の野菜室に入れておくことも、経験的にしょうがないからしていました。だって、すぐに酸化して使えなくなるんだもん。でも、これって肌に塗る油のことです。肌に塗るレベルでこうなのに、口入れる油がビニール容器で、常温棚に埃をかぶって長年スタンバイ、場合によっては照明もしくは日に当たる売り場にあるってあり得ないんじゃ??
A型特有の几帳面さがココに露呈します(笑)。本屋さん曰く、「A型が几帳面ていうのはさ、自分に関することなんだよねぇ」という言葉が脳裏をよぎりますが、自分の身体に入れるものは選びたいですしねぇ。どこかのバイアスが掛かっていない情報があったらなぁと思っていたのでこの本一冊で随分勉強になりました。巷に溢れるテレビや雑誌の料理情報や健康情報で出てくる【カラダに良いモノ】というのは、それが売れると喜ぶ人々の存在が後ろにあります。ですから、いくらお医者さんや栄養士という人達が肩書きを持って喋っていても、イマイチ信用ならない。特にテレビ、雑誌など広告料で成り立っている業界はその傾向が強いでしょ。本屋さんがよく言う「だまされるな!」の精神を持って見てみると、世の中、誰かの利益を根底にして作られた商品イメージの氾濫が目に付きます。
さて、この本を読んで良く分かったのは、「油は絶対に摂取しなければいけないものである」、ということです。細胞膜の原料でございますから、人間を作る基礎、オオモト君です。脳神経細胞の材料でもあり、しかもワタシの体内で作り出すことができるものではない。加えて、日々のエネルギー源、ガソリンの役目を果たします。燃料なくして、きっつい鍼灸師人生は乗り切れぬ(笑)。こうなったら積極的に摂取しなければいけないじゃないか。・・・とくれば、答えは自ずと出て参ります。ワタシの原材料とでもいうべき、大切な油君。質の良い物を選び、最善の摂取方法で口に入れよう!!
①油は一種類ではない:【油】というと、油・脂全般をイメージしてしまいますが、大きく分けて2種類あります。【飽和脂肪酸】と【不飽和脂肪酸】。後者の【不飽和脂肪酸】では更に分かれて、【一価不飽和脂肪酸】と【多価不飽和脂肪酸】。【多価不飽和脂肪酸】が更に分かれて、リノール酸等の【オメガ-6】と、アルファ-リノレン酸等の【オメガー3】がありあます。この分類により、厳守すべき摂取方法が変わってきます。
②【飽和脂肪酸】と【不飽和脂肪酸】:この分類がややこしい・・・と思っていたら簡単でした。前者が常温で固まりやすい動物性脂肪に多く、後者は常温で液体、冷蔵庫に入れても固まらず、分子構造が非常に不安定なので熱に弱く、酸素に触れると酸化しやすい、とってもデリケートな【生食用】と覚えればよし。
一般的な食用油は【不飽和脂肪酸】ですね。常温で液体だもんね・・・。おやっ、【生食用】のはずが何故、天ぷら油になるのでせうか、そもそも賞味期限が1年以上ってありえないはず・・・。コレは怪しい。魔の手が入っておりますね。
どうやら【精製】と呼ばれる工程が、自然界ではありえない長期放置プレーを可能にする油を作り出せるそうなのです。詳しいことは本に譲りますが、【生食用】たる由縁の【アルファ-リノレン酸】を真っ先に取り除き、強制的に安定させるようにさせちゃうのです。【安定】って言葉は良いイメージを植えつけますね。【生活の安定】、鍼灸師が一番所望する言葉ではないでしょうか。が、【油の安定】とは、一番大切な成分を抜き去り、その工程に溶剤を使い、熱に弱いはずの【不飽和脂肪酸】を150℃で蒸留し、脱ガム、精錬、脱色、脱臭といった過程で葉緑素&ミネラル&風味を抜いちゃいまして、場合によっては防腐剤、消泡剤、抗凝固剤、水素を添加しちゃうそうなのです。これじゃ摂取すべき成分が無い上に、取りたくも無い添加物までどうして口にしなきゃイケナイノ?? これって食べ物??、という素朴な疑問が出てきます。商品はできるだけ長持ちしてもらいたい、というのが業者のニーズです。それを最優先し、かつ大量生産できるのでコストパフォーマンスを取っているふりをしているのでしょうか。
③リノール酸神話崩壊:この本の中では生活習慣病の原因と名指しされている、リノール酸。悪玉コレステロールを下げる働きにスポットライトが当てられ、随分チヤホヤされてきましたが、同時に善玉コレステロールも下げており「意味無いじゃん」という事実が近年分かってきたそうです。が、しかし。これは摂取すべき成分【オメガ-6】を多く含むものであり、且つワタシの体内で血液を流れやすくし、血管を拡張し、心筋梗塞・動脈硬化・糖尿病の合併症・肥満・アトピーを予防し、子宮の収縮を助け、生理前の不快をやわらげるといった素敵な作用を持つガンマ-リノレン酸やアラキドン酸を作り出す材料なので摂取しなければいけません。が、【アルファ-リノレン酸】とのバランスを考えた取り方の工夫が必要です。
④リノール酸vsアルファ-リノレン酸:この両者は人体で競合しあっているそうで、両者の適切な摂取量をマークしてバランスをとることが、「油を取る意味」と言えます。4対1(1対1という説もある)が最適だそうですが、なにせ食用加工油にはアルファ-リノレン酸が予め抜かれておりますので、加工食品や外食産業が氾濫する現代では20対1の割合に陥っているそうです。このアンバランスさこそ、油を摂取する上で最も注目すべき点です。にゃので、完璧に不足している【アルファ-リノレン酸】を生食で毎日とることがキーになってきます。健康オタクであろうとも、油全般を敵視する単一的思考ではいけません。【アルファ-リノレン酸】を一日スプーン1杯取ることで作られる、ワタシの中で起こっているバランスにこそ意識を注ぐべきなのです。陰陽のバランス、東洋医学と通ずるこういう考え方は真理を付いていると思えてなりません(笑)。
⑤動物性脂肪を取りすぎると血液がドロドロになる理由:ゴルゴ36先生もこないだ書かれていましたね。これは動物の体温と人間の体温に差があるからだそうです。牛さん、豚さんの方が体温が高いそうです。油は温度が下がると固まる性質がありますので、温度の低い人間の体に入るとサラサラとは流れずに、ドロドロっとなるのだそう。
⑥ドロドロしない油って?:⑤から類推すると、人間よりも体温が低いモノからもらうのが良いのでしょう。イメージしてください。海は冷たいですねぇ(笑)。冷たい海水の中で生活している魚さんは泳いでいる間に血液が固まってしまっては生きていけませんから、体内で固まりにくい【不飽和脂肪酸】のDHAやEPAを沢山持っているそうです。血液サラサラとよく耳にする油の名前ですね。魚の純粋な油は-45度まで固まることが無いものあるそうです。ひょえぇ~。あ、ちなみにですね。古くから魚食が一般的だった民族は新鮮な魚の油を他の民族に比べて多めに取らないといけない体になっているそうです。一度お金を手にすると、生活レベルを下げられない現象とよく似ています。摂取量が多かったので、それに合わせた体になってしまっているんですね。ですから、余計に不足しがちだそうですよ。「生魚だけから摂取しなければいけないのかよ、EPAさん、DHAさんよぉ」と生魚が案外苦手なワタシは悪態をつこうかと思いましたが、デモ大丈夫。こんなワタシでも体内で生産できる設備が備わっているのです。【アルファ-リノレン酸】から作り出せるんですねぇ。だから、野菜と良質な植物油の組み合わせ、【サラダ】で済むわけですよ。冷たい大地から取られる冬のお野菜には、寒さで細胞壁が破壊されないように固まりにくい【不飽和脂肪酸】の【アルファ-リノレン酸】を大量に生産する能力が備わっているそうです。ですから、成分的に多く含まれるんですね。寒い冬の防寒に一役買う旬のお野菜、納得です。
⑦トランス型脂肪酸:日本ではあんまり聞きませんが、欧米諸国ではコレを多く含んだ油脂製品の販売が禁止されるようになったそうです。マーガリンとかね。
後半には、油の悪い取り方が現代日本に於ける諸病蔓延の原因也、とアレコレ言っています。「これさえ守ればアンタは生き返るよ!!」と言わんばかりの押しの強さで畳み掛けていますが、こういう一般向けの本ではしょうがないですね。原因の一端では有るでしょうけど、ちょっちイージーすぎます。ただ、簡単に説明してくれているので、トークには応用が効きます。
要するに、「質の良い油を選ぶこと」から始めなくてはいけません。信頼できる製造方法で、店頭に並ぶまで、及び店頭に並んでからも温度変化や光に当たってこなかったかをも見た方が良さそうです。生食【アルファ-リノレン酸】に限っていえば、冷蔵がよいらしい。自然食品屋さんでも常温棚に置かれているくらい、油の性質っていうのは気にされていないことが多いらしい。実際に目にしました(笑)。そして、油それぞれの特徴的な成分にあった調理法を守ること。これが正しい油の摂取法の気がします。
で、じゃあどうすればいいのよってことに当然なりますね。
『食用油には危険がいっぱい!』を最後まで読むと上記のような結論が導かれると同時に、巻末には「ココで買えます」と、良心的なオイル製造メーカーが載っています(同じ出版社から出ている『危険な油が病気を起こしてる』では、訳者による日本の精油メーカーへの公開質問状を載せる等、独自の調査結果も掲載されており、各メーカーの対応の仕方によって良心度も窺える仕組みになっていますが、本書では幾つかの入手先を記すに留めています)。
「受動的な油摂取のワタシは確実に【アルファ-リノレン酸】が欠乏しているであろう。これこそ改善せねば!!」と、一気に読み上げた勢いで、ネット検索を掛け、ついついお買い物カゴへ・・・、というパターンに陥る自分を冷静に眺めると、「食用油業界に騙されるな!」と思って読みながら、「いとも簡単にこの本に操られてしまった・・・」という一抹の敗北感も混在するのでした(笑)。でも、大手メーカーのモノは大抵アブナそうで、皆様の食生活へのあらたな視点になる事は間違いありません。皆さんならどうしますか?